遺産分割協議と相続放棄の正しい手続き方法とは?書き方について解説

遺産分割協議と相続放棄の正しい手続きガイド

「遺産分割協議における相続分の放棄」と「相続放棄」は混同しやすいですが、異なる手続きです。いずれの選択も、状況に応じて慎重に判断する必要があり、専門家のサポートを受けることで手続きをスムーズに進めることができます。

相続放棄ができないケースについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

相続放棄ができないケースとは?対処法・注意点を弁護士が詳しく解説

1、「遺産分割協議における相続分の放棄」と「相続放棄」の違い

「遺産分割協議における相続分の放棄」と「相続放棄」の違い

(1)遺産分割協議における相続分の放棄

相続人間での遺産分割協議において、相続人が「自身は何も相続しない」と主張して、自分の相続分である遺産共有持分権を他の相続人に対し放棄することを「遺産分割協議における相続分の放棄」といいます。
相続は、被相続人が死亡した時点から開始され(民法882条)、相続人が二人以上いるときには、相続財産は相続人の共有となります(民法898条)。

その共有状態にある相続財産について、「どの相続人が」「どの相続財産を取得するのか」等を確定させるために、相続人全員が参加して話し合うことを「遺産分割協議」といいます。遺産分割協議をどのように行うのかについて、法律上の決まりは特にありません。

民法が定める法定相続分は(民法900条、901条)、遺産に対する持分の割合であり、遺産分割の基準とはなります。しかし、遺産分割協議において、どのように遺産を分割するかは相続人の自由であり、必ずしも遺言や法定相続分に従う必要はありません。

相続人間での協議では、自分の相続分を放棄するだけですので、相続人としての地位は失いません。

①遺産分割協議における相続分の放棄のメリット

時期や方式に制限がない 
遺産分割協議における相続分の放棄は、他の相続人に対して相続分の放棄をする旨主張し、合意があれば効力を生じます。家庭裁判所での手続きも不要で、相続が開始してから遺産分割がなされるまでの間いつでも行うことが可能ですので、時期や方式にも制限がありません。

相続税の基礎控除額が減額されない
遺産分割協議では、法定相続人の数は変わらないため、相続税の基礎控除額が減額されません。そのため、遺産を相続する他の法定相続人の負担を大きくすることなく、遺産の承継を辞退できるメリットがあります。

②遺産分割協議における相続分の放棄のデメリット

遺産分割協議における相続分の放棄は、あくまで相続人間で効力をもつものですので、対外的に被相続人の債権者に対して責任を免れることはできません。したがって、遺産分割協議において相続分の放棄を行ったとしても、被相続人の借金等の負債を免れることはできません。

また、遺産分割協議における相続分の放棄は、相続人間での話し合いが前提となるため、遺産分割協議には対応しなければならず、自分一人で行うことはできません。

③遺産分割協議における相続分の放棄を選ぶべきケース

遺産分割協議における相続分の放棄を選ぶべきケースとしては、被相続人の負債を負う心配がなく、相続人の地位が次順位の相続人に移ることは避けたい場合(例えば、被相続人が父親で、相続人が配偶者である母親と子一人であり、子が母親に全遺産を相続させたい場合など)などが考えられます。

(2)相続放棄

相続放棄とは、相続人が、被相続人の積極財産(プラスの財産)と消極財産(借金などマイナスの財産)の全ての承継を拒否し、相続に関する権利や義務を一切受け継がないという「相続放棄の申述」の受理を、家庭裁判所に対して申し立てる法的手続きによって行います。相続放棄をすると、民法第939条により初めから相続人ではなかったものとみなされます。

①相続放棄のメリット

相続放棄が受理されると、遡って相続人ではなかったことになり、その効果を対外的にも主張することができます。したがって、被相続人の債権者に対しても相続放棄を主張することができ、被相続人の債務の支払いを免れることができます。

また、相続放棄はその相続人の意思のみで、単独で行うことができます。したがって、他の相続人や遺産分割協議に関わりたくない場合に、相続人ではなくなるので、関わりを持つ必要もなくなります。

②相続放棄のデメリット

相続放棄は、相続関係の早期安定の観点から、原則として、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内にしなければならないという期間の制限があります(民法第915条第1項)。

そして上記期間内に、必要書類を揃えて家庭裁判所に申述受理申立を行わなければなりませんので、その点では手間がかかります。もっともこの点については、本コラムの最後にご案内させていただくとおり、当事務所にご依頼いただくことでご負担は大幅に軽減させて頂けると存じます。

③相続放棄を選ぶべきケース

被相続人が債務超過であるなど、その債務を負いたくないという場合には、家庭裁判所に相続放棄の申述受理申立を行う必要があります。

2、遺産分割協議書の書き方

(1)遺産分割協議書の必要書類

遺産分割協議書の書式に定めはありません。

しかし、相続人間で遺産分割協議が成立したことを証明するため、相続財産を正確に記載し、相続人全員の同意があったことを証明する必要があります。

遺産分割協議書作成時に必要な書類は以下の通りです。

  • 被相続人及び相続人を確定するための書類
  • 相続人本人の同意を証明する書類
  • 相続財産に関する資料

具体的には以下を用意しましょう。

  • 被相続人の連続した戸籍(出生~死亡)
  • 被相続人の住民票の除票もしくは附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書と実印
  • 相続財産に関する資料(登記簿謄本や預金通帳など)

(2)遺産分割協議書の記載事項

一般的に遺産分割協議書に記載すべき事項としては、以下の通りです。

被相続人について:氏名、死亡年月日、本籍地、最後の住所
相続人について:氏名、続柄、生年月日

そして、遺産分割の内容として、どの相続財産を、誰が、どれだけ取得するのかなどを具体的かつ正確に明記します。

最後に、相続人全員が住所の記載、署名をして実印を押印し、印鑑証明書を添付します。

また、遺産分割協議において、共同相続人が遠方に共住していて一堂に会して遺産分割協議書を作成することが難しい場合は、各相続人が遺産分割協議書の内容が間違いないことを証明する「遺産分割協議証明書」を作成する方法もあります。

3、遺産分割協議書の作成を専門家に依頼するメリットとデメリット

(1)遺産分割協議書作成を専門家に依頼するメリット

遺産分割協議書作成を専門家に依頼するメリットとして、遺産分割協議書作成に係る手間の大幅な軽減、後日のトラブルが防止できる点が挙げられます。

また、遺産分割協議書の作成までに話し合いの難航が予想される場合には、代理人として対応できる弁護士に依頼するのが適切と考えられます。

(2)遺産分割協議書作成を専門家に依頼するデメリット

専門家に依頼する場合、費用がかかることがデメリットとして挙げられます。

ただし、相続人や相続財産が多い場合、必要書類の準備や書類への記載事項などが複雑となります。トラブル防止のためにも専門家に相談するのが安心でしょう。

4、ご相談は賢誠総合法律事務所へ

当事務所は全国から多数の相続放棄や遺産分割協議のご依頼を受けており、確かな実績を有しております。

特に相続放棄については、必要戸籍一式の取り寄せから、各案件に応じた申述書の作成、裁判所とのやり取り、最終的な受理まで、全て代理人である弁護士にお任せいただけます。また、被相続人の債権者への相続放棄の通知等の対応も致しますので、ご依頼者様の精神的なご負担も大幅に軽減されることと思います。

費用は全て実費込みで、お一人当たり一律5万5000円(税込み)です。追加費用は頂きませんので、安心してご依頼頂けるかと存じます。

是非、賢誠総合法律事務所にご相談ください。

まとめ

今回は、遺産分割協議と相続放棄について解説しました。相続放棄の手続きについて悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。

2024.10.17紀啓子