ペットの葬儀

近時,犬や猫などのペットを飼っている世帯が多くなっており,ペットを飼われているご家庭では,ペットを家族同然に考えておられるご家庭も多く見受けられるところです。そのため,墓苑の利用者から,「ペットと一緒に埋葬してもらいたい」という相談を受けたことのある宗教法人の方も多いのではないかと思います。

今回,このペットの埋葬に関して,紹介させていただきたいと思います(なお,この点については,拙稿「ペットと法③-ペットの死亡」においても紹介していますので,ご参照ください。)。

 

1 ペット霊園事業に許可が必要か

宗教法人の中には,こうしたペットの埋葬を広く受け入れ,ペットと一緒に埋葬することができることを前提に,墓地の募集を行っているケースもあるかと思いますが,こうしたいわゆる「ペット霊園」事業について,行政官庁の許可や届出などが必要でしょうか。

そもそも,人間の埋葬については,墓地,埋葬等に関する法律により,規制がなされており,故人のご遺体の埋葬又はご遺骨の埋蔵については,墓地以外の区域において行ってはならないとされており(同法4条),墓地を開設するには,都道府県知事の許可を得なければならないと定められております(同法10条)。

しかしながら,墓地,埋葬等に関する法律は,ペットの埋葬については規制しておりませんので,少なくとも,同法により,ペットの遺骨を埋葬することは禁じられていないということができます。そして,ペット霊園事業については,現在,これを直接規制する法律が存在しません。

したがいまして,ペットのための墓地を開設したり,ペットの遺骨を埋蔵するなどのペット霊園事業については,何らの許可や届出も要せずに事業として行うことができるというのが現状です。

 

2 ペット霊園は収益事業に当たるか

但し,こうした「ペット霊園」事業を行う場合には,収益事業に該当するとして,課税処分を課される可能性が高いと思われますので,注意が必要です。

この点について,最判平成20年9月12日民集228・617は,ある宗教法人が,「動物霊園」の名称で,ペット用の火葬場,墓地,納骨堂等を設置し,死亡したペットの葬儀,火葬,埋蔵,納骨,法要等を行うとともに,パンフレットやホームページにおいて,これらのペット霊園事業の内容やその料金を記載して,広く周知を行っていたという事案について,次の通り,判示しました。

つまり,まず,同判決は,「本件ペット葬祭業は,外形的に見ると,請負業,倉庫業及び物品販売業並びにその性質上これらの事業に付随して行われる行為の形態を有するものと認められる。」と認定した上で,「宗教法人の行う上記のような形態を有する事業が法人税法施行令5条1項10号の請負業等に該当するか否かについては,事業に伴う財貨の移転が役務等の対価の支払として行われる性質のものか,それとも役務等の対価でなく喜捨等の性格を有するものか,また,当該事業が宗教法人以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か等の観点を踏まえた上で,当該事業の目的,内容,態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当である。」との判断基準を示しました。

そして,具体的に問題となったペット葬祭業について,「上告人の提供する役務等に対して料金表等により一定の金額が定められ,依頼者がその金額を支払っているものとみられる。したがって,これらに伴う金員の移転は,上告人の提供する役務等の対価の支払として行われる性質のものとみるのが相当であり,依頼者において宗教法人が行う葬儀等について宗教行為としての意味を感じて金員の支払をしていたとしても,いわゆる喜捨等の性格を有するものということはできない。

また,本件ペット葬祭業は,その目的,内容,料金の定め方,周知方法等の諸点において,宗教法人以外の法人が一般的に行う同種の事業と基本的に異なるものではなく,これらの事業と競合するものといわざるを得ない。

前記のとおり,本件ペット葬祭業が請負業等の形態を有するものと認められることに加えて,上記のような事情を踏まえれば,宗教法人である上告人が,依頼者の要望に応じてペットの供養をするために,宗教上の儀式の形式により葬祭を執り行っていることを考慮しても,本件ペット葬祭業は,法人税法施行令5条1項1号,9号及び10号に規定する事業に該当し,法人税法2条13号の収益事業に当たると解するのが相当である。」

と判示しました。

したがいまして,宗教法人が,広く事業として,ペットの埋葬について墓地の設置やその供養等を行う場合には,上記の判例に従って,収益事業に該当するとして,課税処分の対象となる可能性が高いことに注意が必要です。

 

3 ペットを埋葬することは適法か

上述の判例で問題となったように事業としてペットの埋葬等を行うケースとは異なり,墓地の利用者から,個別に,ペットと一緒に埋葬してもらいたいという相談を受ける場合もあるかと思いますが,このような場合に,対価を受けてペットの埋葬等を行う程度であれば,個別にペットの埋葬を行ったことだけを捉えて,収益事業と判断される可能性は低いと思われます。

そして,上述の通り,ペットの埋葬については,墓地,埋葬等に関する法律においては禁止されておらず,また,他にこれを規制する特別の法律も存在しないのが現状ですので,墓地利用者からの相談を受けてペットの埋葬等を行うことには法律上の問題はありません。

そのため,宗教法人が自らの管理する墓苑においてペットの埋葬を認めることについては,宗教法人の管理者としての判断に委ねられることとなります。

この点については,ペットの埋葬を拒否することは,墓地,埋葬等に関する法律13条に定める埋葬を拒否することのできる「正当な理由」に該当すると解されておりますので,(新日本法規「Q&A墓苑・斎場管理・運営の実務」参照),墓地を管理運営する宗教法人としては,その宗教法人の宗教的な教義・戒律や,他の利用者との関係(他の墓地利用者の中には,犬や猫などの動物を嫌う人がいることも当然想定されるところです。)という観点から,ペットの埋葬を認めるかどうかを判断しなければなりません。そして,ペットの埋葬を認める場合にも,どのような方法により埋葬・葬儀等を行うか(墓碑への表示を認めるか否かなど)についての配慮が必要になると思われます。

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