宗教法人の解散(3) (清算手続)

1.はじめに

前回及び前々回では、宗教法人の任意解散及び法定解散について述べました。今回は、解散した宗教法人のその後の手続である清算手続について述べたいと思います。

 

2.清算手続

(1)清算人の選任

解散した宗教法人は清算手続に入ります(ただし,破産または合併による解散を除く)。そして、解散後の業務は清算人が行いますので、それまでの代表役員またはその代務者は、規則に別段の定めがない限り、退任することになり、清算人を選任することが必要となります。

まず、任意解散、規則で定める解散事由の発生による解散及び宗教団体を包括する宗教法人にあってはその包括する宗教団体の欠亡による解散の場合、清算人は①規則に定めがある場合はその者、②解散の際に、代表役員またはその代務者以外の者を選任したときは、その選任された者、③①または②によらないときは代表役員またはその代務者が清算人となります(宗教法人法49条1項)。なお,上記①~③により清算人となる者がいないとき、又は清算人が欠けたため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することができます(宗教法人法49条2項)。

次に、所轄庁による認証の取消しによる解散及び裁判所の解散命令にの法よる解散の場合は、裁判所が所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することになります(宗教法人法49条3項)。

 

(2)解散登記・清算人就任登記及び所轄庁への届け出

清算人は、解散の効力が発生した時から2週間以内に、宗教法人の主たる事務所の所在地において、解散の登記及び清算人就任の登記をしなければなりません(宗教法人法57条、53条)。

また、清算人は、解散登記・清算人就任登記が完了したら、登記事項証明書を添えて登記が完了したことを所轄庁へ届け出なければなりません(宗教法人法9条)。

 

(3)清算人の職務

ア.清算人は、次の職務を行うことになります(宗教法人法49条の2)。

① 現務の結了

② 債権の取立て及び債務の弁済

③ 残余財産の引渡し

以下では、各事由について述べていきます。

イ.現務の結了

解散してからの事務(清算事務)を整理し、完了させます。

 

ウ.債権の取立て及び債務の弁済

清算人は、宗教法人が有している債権を取り立て、宗教法人の負っている債務の弁済を行います。

そのため、清算人は、宗教法人が知っている債権者には個別に債権の届け出を催告します。また、宗教法人が知らない債権者のために、清算人に就職した日から2か月以内に、少なくとも三回、官報での公告をもつて、債権者に対し、一定の期間(2か月以上の期間)を定めてその期間内に債権の申し出をすべき旨の催告をしなければなりません(宗教法人法49条の3)。

なお、清算人は、清算中に宗教法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければなりません(宗教法人法49条の5)。

 

エ.残余財産の引渡し

債権の取立て、債務の弁済が全て完了し、清算事務に要した費用を控除した後の財産、すなわち、残余財産を帰属権利者に引き渡すことにより、清算手続は終了することになります。

残余財産の帰属先は、①宗教法人の規則に定めがある場合は、規則で定めるところによります。また、②規則にその定がないときは、他の宗教団体又は公益事業のために処分することができます。さらに、上記①、②によって処分されない財産は、国庫に帰属することとなります(宗教法人法50条)。

 

(4)清算結了登記・所轄庁への届け出

清算人は、清算が結了したときは、清算結了の日から二週間以内に、宗教法人の主たる事務所の所在地において、清算結了の登記をしなければなりません(宗教法人法58条)。

また、清算人は、登記事項証明書を添えて所轄庁へ清算結了の届け出をおこないます(宗教法人法9条)。

これにより、宗教法人は完全に消滅することになります。

弁護士 荻野 伸一

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