宗教法人の解散(2) (法定解散)
1.はじめに
前回は、宗教法人の解散のうち、任意解散について述べましたので、今回は、宗教法人法が規定する事由(宗教法人法43条2項)に基づいてなされる法定解散について述べたいと思います。
2.宗教法人の法定解散事由
(1)法定解散事由
法定解散事由については、宗教法人法43条2項に以下の様に規定されており、これらの解散事由に該当したときは、所轄庁の認証を要することなく、解散手続に進むことになります。
① 規則で定める解散事由の発生(宗教法人法43条2項1号)
② 合併(合併後存続する宗教法人における当該合併を除く。)(同項2号)
③ 破産手続開始の決定(同項3号)
④ 所轄庁による認証の取消し(同項4号)
⑤ 裁判所の解散命令(同項5号)
⑥ 宗教団体を包括する宗教法人にあっては、その包括する宗教団体の欠亡(同項6号)
以下では、各事由について述べていきます。
(2)規則で定める解散事由
宗教法人は、その規則で解散事由を定めておくことができます。なお、宗教法人設立時に、規則に解散事由の定めがなくても、規則を変更して解散事由を定めることもできますし、その反対に、規則に解散事由の定めがあっても、その事由の発生前であれば、規則を変更して解散事由をなくしたり、変更することができます。
規則に解散事由の定めがあるときは、解散事由が発生すると、その宗教法人は解散することとなります。
(3)合併
二以上の宗教法人は、合併して一の宗教法人となることができます(宗教法人法32条)。
合併によって消滅する宗教法人は、合併によって解散することとなりますが、この場合は存続する宗教法人が解散する宗教法人の権利義務を包括的に承継するため、解散する宗教法人は清算手続を行う必要がありません。なお、宗教法人の合併については別途述べる予定です。
(4)破産
裁判所によって破産手続の開始決定がなされると宗教人は解散することとなります。
宗教法人の破産原因としては、債務超過と支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます)とが考えられます。なお、債務超過の場合は、代表役員またはその代務者は、直ちに破産手続開始の申立をしなければならず、その申立によって、裁判所は破産開始決定を行います(宗教法人法48条)。
(5)所轄庁による認証の取消し
宗教法人となるためには宗教団体であることが要件とされているところ(宗教法人法13条1項1号、39条1項3号)、この要件が満たされていないことが判明したときは、所轄庁は、当該認証に関する認証書を交付した日から一年以内に限り、当該認証を取り消すことができます(宗教法人法80条1項)。認証が取り消されると宗教法人は解散することとなります。
(6)裁判所の解散命令
裁判所は、一定の事由がある場合は、所轄庁、利害関係人または検察官から請求があったとき、請求が無くても職権で、宗教法人に解散を命ずることができます(宗教法人法81条1項)。具体的には次のような事由がある場合、解散命令の対象となります。
① 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと(宗教法人法81条1項1号)。
② 宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するという宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたってその目的のための行為をしないこと(同項2号)。
③ 単立の宗教法人である場合には、礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後二年以上にわたってその施設を備えないこと(同項3号)。
④ 一年以上にわたって代表役員及びその代務者を欠いていること(同項4号)。
⑤ 宗教法人の設立または合併に関する認証書を交付した日から一年を経過している場合で、当該宗教法人が宗教団体でないことが判明したこと(同項5号)。
(7)宗教団体を包括する宗教法人にあっては、その包括する宗教団体の欠亡
包括宗教法人(宗派、教派、司教区等)は、被包括宗教団体(寺院、神社、教会等。宗教法人となっていない宗教団体も含みます)がなくなった場合は、包括宗教法人の要件を欠くこととなりますので解散することになります。
弁護士 荻野 伸一