宗教法人と税法(2)
1.はじめに
前回は宗教法人における適切な会計の必要性等について述べましたが、今回は宗教法人と関係する税金の一つである法人税について述べたいと思います。
以下では、まず宗教法人がどのようなことを行った場合に法人税が課されるのか等について概要を述べたいと思います。
2.宗教法人と法人税(概要)
(1)収益事業とは
法人税法は、法人税の納税義務者について、「内国法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。ただし、公益法人等(略)については、収益事業を行う場合、(略)に限る。」と規定しています(法人税法4条1項)。
宗教法人は、ここでいう「公益法人」に該当しますので、宗教法人は「収益事業」を行う場合に法人税の納税義務を負うことになります。すなわち、宗教法人が行う活動のうち、宗教活動(宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成する活動:宗教法人法2条)、及び公益事業(宗教法人法6条1項)については法人税は課されません。
このように、宗教法人が法人税を課されるのは「収益事業」を行う場合のみです。
この「収益事業」については、法人税法は「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう」と規定しています(法人税法2条13号)。そして、法人税法施行令は以下の34種類の事業が「収益事業」に該当するとしています(法人税法施行令5条)。
①物品販売業、②不動産販売業、③金銭貸付業、④物品貸付業、⑤不動産貸付業、⑥製造業、⑦通信業、⑧運送業、⑨倉庫業、⑩請負業、⑪印刷業、⑫出版業、⑬写真業、⑭席貸業、⑮旅館業、⑯料理店業その他の飲食店業、⑰周旋業、⑱代理業、⑲仲立業、⑳問屋業、㉑ 鉱業、㉒土石採取業、㉓浴場業、㉔理容業、㉕美容業、㉖興行業、㉗遊技所業、㉘遊覧所業、㉙医療保健業、㉚技芸・学力の教授業、㉛駐車場業、㉜信用保証業、㉝無体財産権の提供業、㉞労働者派遣業 |
なお、これらの事業に係る事業活動の一環として、又はこれに関連して行われるいわゆる付随行為も収益事業に含まれます。
(2)軽減税率について
上記2(1)の通り、宗教法人が「収益事業」を行う場合には法人税が課されることになります。
もっとも、「収益事業」から得た所得に法人税が課税されると言っても、宗教法人は株式会社等の一般の法人と比べて税率が軽減されています。
具体的には、宗教法人の「収益事業」から得た所得に対する法人税税率は、各事業年度の収益事業に係る所得金額の19%(平成24年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額については15 %)とされています。
(3)みなし寄附金について
宗教法人が収益事業から得た収益については、みなし寄付金の適用もあります。
株式会社等の一般の法人が寄附を行った場合は、寄附金を支出した法人の資本金等の額または所得の金額を基礎として計算した限られた額までしか損金の額に算入されません(法人税法37条1項)。
これに対し、宗教法人が収益事業に属する金銭その他の資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなされます。そして、この収益事業に係る寄附金の額については、各事業年度の所得金額の20%まで損金に算入できるとされており、株式会社等の一般の法人に比べて優遇されています。
次回以降では、宗教法人が行う収益事業について個別の注意点等を述べる予定です。
以 上