介護施設利用料の回収方法

福祉事業の専門法令知識

 介護施設を運営する上で、介護施設利用料の滞納が発生した場合の回収方法について解説いたします。

1 書面による督促

 まずは、内容証明郵便などの書面を利用して、利用料を滞納している利用者に対して、滞納金の支払いを督促する方法が考えられます。内容証明郵便を利用される場合には、配達証明サービスも付けることをお薦めします。

 この方法では強制的に滞納利用料を回収できるわけではありませんが、書面で明確に滞納利用料を請求することで、滞納している利用者が自ら滞納施設料を支払う可能性が高まります。

2 裁判上の手続

 1の方法でも利用者が滞納施設料を支払わない場合、裁判上の手続を取る方法が考えられます。

 具体的には、訴訟を提起する方法、支払督促手続を利用する方法があります。裁判上の手続を取った場合、施設利用者が任意に滞納施設料を支払う可能性が高まるだけではなく、仮に施設利用者が裁判上の手続に応じなかったとしても、施設側は債務名義(勝訴判決など)を得ることができます。

 債務名義を得ることで、次に強制執行という手続に移行することができます。その名の通り、強制的に施設利用者から滞納施設料を回収することが可能です。事前に、施設利用者の預貯金、給与などの財産を把握していれば、比較的スムーズに滞納施設料を回収することが可能です。施設利用者の財産を把握されていない場合には、当事務所で調査いたしますので、ご相談ください。

3 事前の対策

 1や2の滞納施設料の回収方法をご紹介しましたが、そもそも施設利用者の資力がなく、回収が困難になるケースも多々あります。

 そこで、事前の対策として、契約締結時に連帯保証契約の締結は原則とすることをお勧めします。連帯保証契約の詳細については別のコラムでご紹介いたします。

 また、預り金の徴求を行う方法が考えられます。ただし、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅については預り金の規制があることに注意しなければなりません。家賃等の前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ前払金の返還を行う場合に備えて、必要な保全措置をとらなければなりません(老人福祉法29条9項、高齢者住まい法7条1項6号ニ)。必要な保全措置とは、銀行等との連帯保証委託契約の締結や、保険事業者との保証保険契約の締結などです(老人福祉法施行規則20条の10、平成18年厚生労働省告示第266号)。さらに、契約が早期に終了する場合について、厚生労働省令で定める方法により算定される額を控除した金額を返還する旨の契約をしなければなりません(老人福祉法29条10項、同法施行規則21条、高齢者住まい法7条1項6号ホ)。

 そもそも施設利用者の収入がないような場合には、生活保護の申請を勧めることも検討すべきでしょう。

弁護士: 仲野恭子