利用者の利用者に対する加害行為についての施設側の責任
福祉事業の専門法令知識
1 はじめに
介護施設内で、利用者が他の利用者に対して加害行為を行った場合、施設は被害を受けた利用者に対して損害賠償義務を負うのでしょうか。
2 施設側の責任を認めた判例
特別養護老人ホームにおいてショートステイを利用中、車いすに座っていたAが、同じサービスを利用していたBに車いすを押されたため転倒し、後遺障害を負ったとして、同ホームに対し債務不履行を理由として損害賠償を求めた事案において、同ホームのAに対する損害賠償義務を認めた判例があります。
大阪高判平成18年8月29日は、①同ホームは、Aとの契約の約款記載のとおり、サービスの提供にあたり、契約者の生命、身体の安全に配慮すべき義務を負うことは当然であるとし、②Bが執拗にAの車いすが自身の物と主張してハンドルを揺らす等しているから、介護職員の説明には納得しておらず、継続して同様の行為をするだけでなく、本件事故の原因となる行為にまでエスカレートさせることも予測可能であったと判断し、同ホームのAに対する損害賠償義務を認めました。
3 まとめ
上記のような判決内容を知ることは、施設側が損害発生防止のために、どのような対応をすべきかを考慮する契機となりますので、疑問に思われていることがございましたら、是非一度ご相談ください。
弁護士: 斉藤聡子