評議員について(2)

福祉事業の専門法令知識

 評議員について(1)では、評議員の権限と義務について、ご説明致しました。評議員に善管注意義務があり、損害賠償責任を負いうることから、社会福祉法人では、評議員候補者を集めることに苦慮されているところが多くなっています。

 そこで、今回は、評議員が負う責任の内容と、民事上の責任が免除される場合について検討した上で、社会福祉法人が評議員との間で責任限定契約を締結できるかという点について述べます。

1 評議員が負う責任

(1)第三者に対して負う責任

 役員等又は評議員がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等又は評議員は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う(社会福祉法第45条の21)

(2)社会福祉法人に対して負う責任

 役員等又は評議員は、その任務を怠ったときは、社会福祉法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(社会福祉法第45条の20)

(3)連帯責任

 役員等又は評議員が社会福祉法人又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等又は評議員も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする(社会福祉法第45条の22)

(4)刑事責任

・社会福祉法人に対する特別背任罪(7年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金)

・「不正の請託を受け財産上の利益を収受」した場合の罪(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金)

2 責任が免除される場合

 上記1(2)の社会福祉法人に対して負う責任が免除されるのは、評議員の全員が責任免除に同意した場合(一般社団法人法112条、111条、社会福祉法45条の22の2)です。その場合、全ての責任が免除されます。

 第三者に対して負う責任や、刑事責任は、評議員の全員が同意したとしても免除されませんので、注意が必要です。

3 社会福祉法人が評議員との間で責任限定契約を締結できるか

 責任限定契約は、業務執行理事でない者が職務を行うにつき善意で重大な過失がないときに、あらかじめ負うべき責任を制限する旨の契約を締結できるとするものです(一般法人法第115条1項、社会福祉法第45条の22の2)。一般法人法第115条1項の責任限定契約を締結できる者に評議員は含まれていませんので、評議員は責任限定契約を締結できないものと考えられます。

4 対応策

 社会福祉法人に対する責任については、評議員全員の同意を得ることにより免除できますが、第三者に対する責任については免除できません。そこで、役員賠償責任保険に加入することも考えられますが、保険の内容と損害賠償責任を負いうるリスクがどの程度あるかを考慮しなければなりません。また、当然ながら、刑事責任については保険では対応することができません。

 常日頃から、損害賠償責任や刑事責任を負うことがないように、内部管理体制を構築しておく必要があります。

 当事務所では、社会福祉法人の顧問弁護士となり、日々の業務に関する法律相談から損害賠償等といった問題が生じた時の対処まで幅広く対応しております。是非一度ご相談ください。

弁護士: 斉藤聡子