宗教法人の管理・運営(5) (宗教法人規則の変更)

1.はじめに

宗教法人の規則は、宗教法人の目的、組織、管理運営の根本原則を定めるものです。そのため、宗教法人の規則と宗教法人の運営とは常に一致させておくことが必要です。しかしながら、規則の作成時からの時間の経過やその他の事情の変更等により、規則の変更が必要となる場合があります。規則の変更が必要となる場合としては、①通常の場合、②被包括関係の設定を行う場合、③被包括関係の廃止を行う場合、が考えられますが、以下では、①通常の場合の規則変更について述べたいと思います。

 

2.通常の場合の規則変更

(1)はじめに

通常、規則変更が必要となる場合としては、責任役員の定数の変更、事務所の移転、宗教法人が公益事業や公益上業以外の事業を開始する場合(宗教法人法第6条参照)等が考えられます。

このような規則変更を行う場合には、大きく分けて2つの手続、すなわち、①宗教法人内部の手続、②認証手続が必要となります(宗教法人法第26条1項)。

 

(2)宗教法人内部の手続

宗教法人法は、宗教法人の「規則の変更に関する事項」を規則に定めるべきものとし(宗教法人法第12条1項9号)、また、宗教法人が規則を変更する場合は、「規則で定めるところによりその変更のための手続をし」なければならないとしています(宗教法人法第26条1項)。

具体的に、どのような内部手続が必要となるかは、各宗教法人の規則の定めるところによりますが、一般的には、①責任役員(会)の議決、②総代(信徒代表)の同意、③宗派の代表役員の同意(被包括宗教法人の場合)等を要すると定められていることが多いと思われます。

 

(3)所轄庁の認証手続

宗教法人内部での規則変更手続が終了すると、所轄庁に規則変更の認証の申請を行うことになります(宗教法人法第26条1項)。

この認証申請を行う場合には、①認証申請書(所轄庁に認証申請書のひな形が用意されているのが通常です)、②規則「変更しようとする事項を示す書類」を2通、③「規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類」を所轄庁に提出します(宗教法人法第27条)。

所轄庁は、認証の申請を受理した場合においては、その受理の日を附記した書面でその旨を宗教法人に通知した後、当該申請に係る規則変更を認証すべきか否かの審査を行うことになります(宗教法人法第28条)。所轄庁が審査を行うのは、①その変更しようとする事項が宗教法人法その他の法令の規定に適合していること、②その変更の手続が宗教法人法第26条の規定に従ってなされていること、の2点(宗教法人法第28条1項1号、2号)で、規則の変更内容の当否には及びません。

所轄庁は、当該申請に係る規則変更が上記2つの要件を備えていると判断したときは、規則変更を認証する旨の決定を行わなければなりません。また、所轄庁が当該申請に係る規則変更が上記2つの要件を備えていないと判断したときは、規則の変更を認証しない旨の決定をすることになります(宗教法人法第28条1項)。なお、これらの決定は当該申請が受理された時から3か月以内になされることになっています(宗教法人法第28条2項・第14条4項)。

 

(4)規則変更の効力発生

通常の規則変更は、所轄庁が規則変更の申請を認証する決定を行い、認証書を宗教法人に交付した時に効力が生じます(宗教法人法第30条)。

 

(5)規則変更の登記

通常の規則変更の手続は、所轄庁から認証書の交付を受けて完了しますが、規則変更の対象となる事項が宗教法人法第52条2項各号に記載されている事項(例えば、宗教法人の目的、名称、事務所の所在場所等)である場合は、その事項を変更する旨の登記を2週間以内に行わなければなりません(宗教法人法第53条)。

なお、この登記は対抗要件としての登記であり、規則変更の効力自体は生じているのですが、それを登記しなければ、第三者には規則変更を対抗できないこととなります(宗教法人法第8条)。

また、登記した後は、「遅滞なく、登記事項証明書を添えて、その旨を所轄庁に届け出なければな」りません(宗教法人法第9条)。

    弁護士 荻野伸一

 

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