介護施設の概要

事例紹介

要介護者の方がご自宅以外で介護を受けながら生活する施設としては、老人ホームや高齢者向け住宅などの施設があり、入居条件や期間、入居目的によって様々な種類があります。本コラムでは、各高齢者施設の特徴を大まかにご説明いたします。

1.介護老人福祉施設(通称「トクヨウ」)

 介護老人福祉施設(介護保険法8条27項、老人福祉法20条の5)は、要介護3~5の常に介護の必要な要介護者が入居し、日常生活の介護や健康管理を受けながら生活する施設です。介護老人福祉施設は、老人福祉法上では、「特別養護老人ホーム」と呼ばれるため、一般的には「トクヨウ」と呼ばれることも多いようです。
 介護老人福祉施設の特徴は、他の施設と比べ、入居のための費用が安いことにあります。また、介護老人福祉施設は、終身の利用が可能で、施設内での看取りもできます。
 一方で、介護老人福祉施設には入居待機者が非常に多いことも特徴です。入所の順番は、申し込んだ順番ではなく、入所の必要性により判断されますので、要介護度が比較的低く、介護する家族が居る方は何年も入所を待ち続けることもあるようです。

《参照:「介護事業所・生活関連情報検索「どんなサービスがあるの?」(厚生労働省ホームページ)」

「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group14.html


2.介護老人保健施設(通称「ロウケン」)

 介護老人保健施設(介護保険法8条28項)は病気の治療を終えたが要介護1~5の人(介護保険法施行規則20条)が入居し看護、医学的な管理下のもとで介護やリハビリを行い、在宅復帰を目指す施設です。入所可能な期間は、基本的に約3ヶ月~半年程度です。また、入居のための費用は介護老人福祉施設の割高になります。在宅復帰を目的としているため、サービス内容としては医療ケア、リハビリが中心です。また、一定期間で人間を入れ替えるのが前提なので待ち時間が少ないことも特徴として挙げられます。

《参照:「介護事業所・生活関連情報検索「どんなサービスがあるの?」(厚生労働省ホームページ)」

「介護老人保健施設」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group15.html


3.介護療養型医療施設

 介護療養型医療施設(介護保険法8条29項)は、療養病床等を有する病院または診療所であって、当該療養病床等に入院する要介護1~5の方に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他の世話および機能訓練その他必要な医療を行うことを目的とする施設です。病状安定期にあり療養上の管理を必要とする要介護者(介護保険法施行規則21条)が利用可能で、介護老人保健施設とは異なり、長期の利用が可能です。
 介護療養型医療施設は介護老人保健施設や介護老人福祉施設に入所できない要介護者が長期にわたり生活することが可能でしたが、医療的ニーズが高くない高齢者が長期間にわたり入所している現状を踏まえ、廃止されることが決定しました。今後は、病状により、夜間の医療措置が可能な介護療養型老人保健施設や介護医療院が医療行為の必要な要介護者の受け入れを行うことになります。

《参照:「介護事業所・生活関連情報検索「どんなサービスがあるの?」(厚生労働省ホームページ)」

「介護療養型医療施設」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group16.html

4.介護医療院

介護医療院とは、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護および機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設(介護保険法8条29項)です。
介護医療院は、平成30年4月より創設された新しい施設であり、日常的な医学管理や看取り、ターミナルケアの昨日と生活施設としての機能を兼ね揃えた施設として制度設計されました。

《参照:「介護事業所・生活関連情報検索「どんなサービスがあるの?」(厚生労働省ホームページ)」

「介護老人保健施設」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group26.html 

5.有料老人ホーム

有料老人ホーム(老人福祉法29条)とは、高齢者向けの間取りや設備、食事や介護サービスが提供される高齢者向けの住まいです。有料老人ホームには、「介護付き」「住宅型」「健康型」の種類がございます。「介護付き」有料老人ホームでは、食事や安否確認の他、当該施設内で「特定施設入居者生活介護」(介護保険法8条11項)というサービスが受けられます。全ての介護サービスが施設内で受けられ、介護に関する費用は毎月一定額となります。基本的には心身の状態の変化や要介護度の変化があっても住み続けられる構造になっています。「住宅型」有料老人ホームは、次にご紹介するサービス付き高齢者向け住宅と似ており、食事や生活相談などが受けられます。介護サービスについては、必要に応じて外部サービスを利用することになりますので、利用時間や回数によって必要な費用が異なります。「健康型」有料老人ホームは、介護の必要ない高齢者が対象です。そもそも要介護認定を受けた方向けではないため、重度の介護を必要とする状態になりますと退去する必要が出てきます。

有料老人ホームは施設ごとの特色を活かした手厚いサービスが受けられる一方で、公的施設に比べ費用が高額です。例えば、入居に要する費用で言えば、少ない施設でも300万円、多い施設では数千万円の入居一時金が必要となる場合もあるようです。

《参照:「介護事業所・生活関連情報検索「どんなサービスがあるの?」(厚生労働省ホームページ)」「特定施設入居者生活介護」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group17.html

6.サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住、さつき)

サービス付き高齢者向け住宅(高齢者住まい法5条)とは、高齢者向けの賃貸住宅であり、専有居室の広さや設備等が方の定める基準を満たし、かつ安否確認や生活支援サービスが提供される住宅をいいます。入居可能な人や施設のサービスは各施設により様々で、要支援や自立した人(要介護者の配偶者など)が入居できる施設、医療依存度の高い人、認知症の人が入居できる施設もあります。また、介護サービスについて、サービス付き高齢者向け住宅は、「自宅」という扱いですので、居宅サービス(介護保険法8条1項)を利用することができます。入居に必要な費用は、一般の賃貸住宅と同様、賃料、敷金等ですが、介護サービスを受ける場合には居宅介護サービスの利用料がかかります。入居の期間等についても、介護度が上がれば退去の必要がある施設から終の棲家として利用可能な施設まで、施設によって様々ですので、立地、サービスの内容などと合わせてご希望に沿う施設を探していただければと思います。

7.認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)

認知症対応型共同生活介護(介護保険法8条20号)とは、要支援2、もしくは要介護状態であって、かつ認知症である方が一つの共同生活住居に5~9人で共同生活を送る施設です。同施設では、入居者の方が介護職員の支援を受けながら、食事の支度や掃除、洗濯など身の回りのことを自分で行いながら、家庭的な環境の中で認知症の症状を緩やかにすることを目的としており、認知症の方が入所までの生活と同じような暮らし方ができるように配慮されます。入居に必要な費用は月々の介護費用とは別に、居住費、食費、おむつ代などが必要で、およそ15万円~30万円の施設が一般的なようです。また、数十万円から数百万円の入居一時金の必要な施設もございますので注意が必要です。基本的には、期間の制限なく住み続けることが可能ですが、医療ケアが必要となった方や、認知症が重度化し共同生活を送ることが難しくなった方は退去しなければならない場合があります。

弁護士: 田代梨沙子