保証契約時の留意点とその効力
福祉事業の専門法令知識
高齢者福祉サービスを提供する事業において、介護保険等があるものの、主たる収入源としては、利用者からお支払いいただく利用料等になるかと思います。もし利用者の資力に不安等がある場合、確実にお支払いいただくための方策として、1つは保証人を求めることが考えられます。
保証人とは、特定の債務を履行すべき債務者(これを「主債務者」といい、ここでは利用者のことを指します)が債務を履行しなかった場合に、主債務者に代わって債務を履行する義務を負担する内容で、債権者との間で契約(これを「保証契約」といいます)を締結する者をいいます。
保証契約を締結することが出来れば、事業者としては、利用者の代わりに保証人から支払ってもらうことも可能になりますので、非常に有益なものです。ただし、いくつか注意点があります。
まず、保証契約は書面で行わなければならないとされています(民法446条2項)。もし書面で行われなければ、保証契約は無効になってしますので注意が必要です。保証人は、親族の方になっていただくことが多いと思いますので、利用者及びご親族の方に対して、利用契約の内容をご説明する際に、保証契約についてもご説明して、利用契約を締結と併せて保証契約も締結することが考えられます。
次に、保証人保護の観点から、民法改正によって、保証の規定が一部変更されました。
何よりも重要な点としては、根保証契約は、極度額(保証人が責任を負う限度)を定めなければ無効になるとされたことです(民法465条の2第1項)。この根保証契約とは、特定の債務だけではなく、主債務者と債権者の間で将来にわたって発生する債務を包括的に保証する契約のことを言います。一般的な利用契約は、これに該当することが多いと思いますので、注意が必要です。
そのほか、主債務者から連帯保証人に対しての情報提供義務(民法458条の2、民法458条の3)など、重要な改正点がいくつかあります。
せっかく保証人をとっていたのに、いざ請求するとなった段階で、思ったような請求ができない(支払いしてもらえない)という事態にならないように、一度当事務所にご相談いただければと思います。
弁護士: 横山和之