外国人の方の雇用について

福祉事業の専門法令知識

1 外国人の方を雇用するには

 高齢者福祉サービスのニーズは年々増加しており、介護従事者の人材確保は喫緊の課題です。そのようななかで、今まさに外国人の方の雇用を視野に入れた動きが加速しているところです。

外国人の方は、入管法で定められている在留資格の範囲内において、日本での就労活動が認められていますが、

事業主がそのような外国人の方を雇用する方法はいくつかあります。今回は、次の3つをご紹介します。

 ① EPA(経済連携協定)に基づく看護・介護分野での受入れ

 ② 技能実習制度を利用した受入れ

 ③ 在留資格としての「特定技能」を利用した受入れ

 

2 EPA(経済連携協定)に基づく看護・介護分野での受入れ

 日本は、平成20年度からインドネシア、平成21年度からフィリピン、平成24年度からベトナムとの間で、それぞれ経済連携協定(EPA)に基づき、外国人看護師・介護福祉士候補者(以下、「外国人候補者」といいます)。の受入れを実施しています。もっとも、これら3国からの受入れは、あくまで経済活動の連携の強化の観点から実施するもので、看護・介護分野の労働力不足への対応として行うものではありません。

 外国人候補者は、看護師・介護福祉士の国家資格を取得することを目的として、協定で認められる滞在の間(看護3年間、介護4年間)に就労・研修することになっています。外国人候補者と受入れ施設との契約は雇用契約であり、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を支払う必要があるほか、日本の労働関係法令や社会・労働保険が適用されることになります。

 また、資格取得後は、看護師・介護福祉士として滞在・就労が可能です(在留期間の更新回数に制限無し)。

《参照:「インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて」(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/other22/index.html 》

 

3 技能実習制度を利用した受入れ

  次に、「技能実習制度」の活用をご紹介します。

 「技能実習制度」とは、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とするものです。平成29年11月から、技能実習制度の対象職種に、介護が加わり、介護分野での技能実習生の受入れが始まっています。

 技能実習の形態としては、大きく企業単独型技能実習と団体監理型技能実習に分けられます。企業単独型技能実習は、日本の企業等が海外の現地法人、 合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する形態です。団体監理型技能実習は、非営利の監理団体(事業協同組合、商工会等)が技能実習生を受入れ,傘下の企業等で技能実習を行わせる形態です。

 いずれであっても、技能実習実施者は、技能実習生ごとに、技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構から、その技能実習計画が適当である旨の認定を受けなければなりません。そして、認定を受けた技能実習計画に従って技能実習を行わせなければならず、仮に違反があった場合には、改善命令や認定の取消しの対象になります。そのほか、介護分野における固有要件も定められており、技能実習生の指導を担当する者として技能実習指導員の配置や、実習生の受入人数の上限も決められており、これらを技能実習制度本体の要件に加えて満たす必要があります。

 他方、技能実習生についても、介護職種においては、介護サービスの質を担保し、利用者の不安を招かないようにするため、一定水準以上の日本語能力が求められます。第1号技能実習 (1年目)では、日本語能力試験のN4に合格しているか、あるいはその他これと同等以上の能力を有すると認められる必要があり、第2号技能実習 (2年目)では、 N3に合格しているか、あるいはその他これと同等以上の能力を有すると認められなければなりません。その他にも、厳しい要件が定められています。

《参照:技能実習制度 運用要領 (厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/01.html

《参照:「技能実習『介護』における固有要件(厚生労働省)」

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000182392.pdf 》

 

4 在留資格としての「特定技能」をもつ者の受入れ

 最後に、「特定技能」という在留資格についてご説明します。

 人材確保が困難な分野について、 一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人の方を受け入れる制度として、平成30年12月、出入国管理及び難民認定法が改正され、「特定技能1号」「特定技能2号」という在留資格が創設されました。その対象分野は多岐にわたりますが、介護分野も含まれており、これらの在留資格による外国人の方の受入れも、その方法の一つとして考えられます。

 「特定技能1号」とは、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人の方向けの在留資格です。「特定技能1号」の在留資格を有する外国人の方を受け入れるには、直接雇用契約を前提として、地方出入国在留管理局に、在留資格認定証明書交付申請書を提出し、同証明書の交付を受け、その上で、在外公館に、外国人ご本人のビザを申請し、これが交付されると、本人が来日できます。また、受け入れ側は、「特定技能1号」の在留資格の支援計画を作成、実施しなければならないことになっています(出入国在留管理庁長官に登録されている登録支援機関に対し委託することも可能。)。

 「特定技能2号」とは、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人の方向けの在留資格です。主として、「特定技能1号」の在留期間(5年以内)が終了した後に移行することが想定されています。「特定技能2号」の在留資格を有する外国人の方には、「特定技能1号」の方には認められない家族の帯同が認められ、在留期間の更新に上限がなくなります。

 特定技能在留外国人は年々増加しており、令和4年3月末(速報値)では、6万4730人の特定技能在留外国人の方がいらっしゃいます。分野別でみると、飲食料品製造業、農業に次いで介護は3番目に多く、7019人の方が従事されています。

 

《参照:「特定技能制度」、「特定技能制度運用状況」(出入国在留管理庁)》

https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri01_00127.html

https://www.moj.go.jp/isa/content/001359454.pdf

 

 

5 まとめ

 いずれの方法も手続きや要件が細かく定められており、「人材確保」の観点だけでは容易に選べるものではありませんが、より大切なのは、外国人の方であっても同じ職場で働く仲間であるという意識を育んでいけるかどうかだと思います。

以上

弁護士: 壽 彩子