未使用著作物裁定制度について

渡邉 圭輔

  • 企業法務

1 はじめに

広告やSNS投稿、パンフレットなどを作っているときに、
「このイラスト、雰囲気にぴったりだから使いたい!」
と思っても、
・作者が誰なのかわからない
・連絡先が見つからない
・SNSアカウントは見つかったけど返信がない
こんな理由で、結局使用を諦めてしまった――という経験はありませんか。ネット上には魅力的なイラストや写真、文章があふれていますが、「誰に許可を取ればいいのかわからない著作物」はとても多く存在します。

2 これまでの法制度

これまでは「連絡が取れても、返事がなければ使えない」制度でした
他人の著作物を利用する際には原則として著作権者の許可が必要です。
これまでも、権利者と連絡が取れない場合に備えて、「権利者不明の場合の裁定制度」(著作権法第67条)という仕組みは存在していました。しかし、この制度を利用できる場面は以下のとおりでした。
・権利者が不明 → 利用できる可能性あり
・権利者は判明しているが連絡先が不明 → 利用できる可能性あり
・権利者にも連絡先にもたどり着き、実際に連絡もしたが、返事がなく意思が分からない → 対象外(=利用できない)


つまり、「イラストの作者は分かった、SNSのDMも送った、でも既読無視のまま返事がない」というよくあるケースが、制度の対象外でした。加えて、権利者を探すための相当な調査や書類作成の手間もあり、忙しい広告制作の現場では「間に合わないから諦める」ということもあったかと思います。


3 「未管理著作物裁定制度」が誕生

こうした課題を受けて、令和5年の著作権法改正により、新たに「未管理著作物裁定制度」(著作権法第67条の3)が創設され、令和8年4月から運用が開始されています。
この制度の対象になるのは、次の条件をすべて満たす著作物(「未管理公表著作物等」といいます)です。
・すでに公表されている著作物であること
・著作権等管理事業者(JASRAC等)による集中管理がされていないこと
・「利用は問い合わせ不要」「利用禁止」といった、利用可否に関する著作権者の意思表示が示されていないこと

そのうえで、権利者情報や連絡先を探索し、実際に連絡を試みたにもかかわらず14日間返答がない場合(あるいはそもそも連絡が取れない場合)には、文化庁長官の裁定を受け、通常の使用料相当額の補償金を指定補償金管理機関へ支払うことで、最長3年間(期間経過後は再度利用可能)その著作物を利用できるようになりました。

まさに「連絡はしたけど返事がない」という、これまであきらめるしかなかったケースが、救われる制度に変わったのです。手続きについても、申請の受付や補償金額の算出は文化庁長官の登録を受けた民間の「登録確認機関」が担い、審査期間の目安は申請から8営業日程度とされています(権利者不明の場合の裁定制度は2か月程度)。

なお、後から権利者が現れて申し出た場合には裁定が取り消され、それまでの利用期間分の対価は権利者に支払われる仕組みになっています。

4 まとめ

「気に入ったイラストがあるのに、権利者がわからず使えない」というお悩みは、この新しい裁定制度によって解決できる可能性があります。とはいえ、
・本当に「未管理公表著作物等」に該当するか
・権利者への連絡先の調査など、どのような手順を踏めばよいか
・登録確認機関への申請手続きや補償金の算定はどう進めるか
など、実際の手続きには専門的な確認が必要な場面も多くあります。
「このコンテンツ、うちの広告で使いたいけど大丈夫かな?」とお困りの際は、お気軽にご連絡ください。