「無料」求人広告のはずが高額請求 ― 東京地判令和元年9月9日にみる救済の道筋 ―

岩永 一輝

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1 ご相談の概要

 求人サイトを運営する事業者から「無料で掲載できる」との勧誘を受け、指示どおりに申込書を返送したところ、後日、「無料期間を過ぎたので有料プランに自動更新された」として、3か月分の広告料として数十万円の請求書が突然届いた。当事務所では、企業のご担当者様から、こうしたご相談を受けることが少なくありません。

 典型的な手口として、勧誘用のチラシには「無料掲載」と大々的に記載され、申込書のトライアル欄にも「〇日間0円キャンペーン」等と目立つ大きさで表示されている一方、自動更新に関する記載は同じ申込書の下部に小さな文字で置かれているにとどまり、FAXで送受信するとその画質劣化によって判読すら困難になっていることもあります。

2 東京地方裁判所令和元年9月9日判決の要旨

 このような求人広告サービスの利用代金請求について、東京地方裁判所令和元年9月9日判決(平成31年(ワ)第4528号)は、契約自体を公序良俗(民法90条)に反し無効であるとして、事業者に対する利用代金請求を全部棄却しました。同判決の判示のうち、実務上特に重要と思われる点は、次のとおりです。

(1)自動更新に関する事項が利用規約に記載されていたとしても、これは不動文字で印刷されているにすぎず、これをもって業者が顧客に対して当該事項を説明したものと認めることはできない。

 (2)無料掲載期間を1日でも経過すれば直ちに高額な広告料の支払義務が発生する仕組みであるにもかかわらず、事前に顧客に対して有料掲載へ移行するか否かの意思確認を行う仕組みが設けられていないこと自体が問題である。

 (3)業者が無料掲載期間の終了に先立って送付した注意喚起の書面についても、それが無料掲載期間の最終日に到達するといった実質を欠くものである場合には、真に注意喚起の趣旨で送付されたものとは認められず、単に注意喚起をした体裁を整えようとしたものにすぎないと評価される。

 (4) 以上を総合すれば、業者は「専ら無料掲載期間内に解約しなかった顧客に広告料を支払わせることのみを目的として本件契約を締結している」というほかなく、当該契約は公序良俗に反し無効である。

 同判決は、契約の相手方が水産物の加工・販売等を業とする株式会社、すなわち事業者であったにもかかわらず契約を無効と判断したものであり、事業者間の取引であるからといって直ちに支払義務が肯定されるものではないことを明確にした点にも重要な意義があります。

3 おわりに――どうぞご安心ください

 自社宛に思いがけない請求書が届き、「担当者が申し込んでしまった以上、支払わざるを得ないのだろうか」とお悩みの場面は少なくありません。しかし、上記判決の枠組みは、無料の強調・意思確認手続の不備・広告宣伝に紛れさせた自動更新通知といった悪質な勧誘構造を持つ契約類型に広く及び得るものであり、当事務所の実務においても、代理人弁護士から相手方に対して連絡書を差し入れることで、相手方が請求を取り下げ、又は事実上請求を断念するケースは決して珍しくありません。

 「他社に妥当した判例が本当に自社にも及ぶのか」「反論の書面はどのように書けばよいのか」といったご不安をお持ちの場合は、社内で抱え込む前に、まずは顧問弁護士又は当事務所までご相談ください。同種事案の裁判例や実務動向を踏まえ、貴社の状況に応じた最適な対応を迅速にご提案いたします。