人事訴訟における欠席裁判について

離婚

1 人事訴訟とは

婚姻や離婚の無効・取消しの訴え、離婚の訴え、嫡出否認や認知に関する訴え、養子縁組や離縁の無効・取消に関する訴え、離縁の訴え等の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴えを人事訴訟といいます(人事訴訟法2条)。

人事訴訟では、民事訴訟法に優先して、人事訴訟法が適用される点が通常の訴訟と異なります(人事訴訟法1条)。

2 欠席裁判について

通常の民事訴訟では、被告が期日に欠席し続けるような場合、被告において原告側の主張を自白したものとみなされます(擬制自白、民訴法159条1項)。これは、事実の真偽にかかわらず、また、事実を裏付けるための十分な証拠がない場合でも、原告側の主張する事実が訴訟において認定されることを意味します。そのため、通常の民事訴訟では、被告が期日に欠席して訴訟に参加しない場合、原告の主張がそのまま認定される、ひいては原告の主張に不足がない場合には原告の請求が認容されることになります(いわゆる欠席裁判)。

(但し、被告の所在が不明であり公示送達による呼び出しがなされている場合、例外的に擬制自白は成立しません(民訴法159条3項)。)

2 人事訴訟における欠席裁判

人事訴訟においても、原則として民事訴訟法の適用はあります。しかしながら、人事訴訟では、例外的に民事訴訟法159条1項が適用されないこととされております(人事訴訟法19条1項)。

そのため、人事訴訟において被告側が欠席をし続けるような場合でも、原告側の主張する事実、ひいては請求が認められるためには、これを裏付ける証拠が必要になる点が、通常の民事訴訟と大きく異なります。

こちらの請求に対して紛争の相手方が無視、無応答を続けるような場合、通常の民事訴訟においては、欠席裁判の可能性も見越して訴訟を提起することがあります。しかしながら、上記のとおり人事訴訟においては、民訴法159条1項に基づく擬制自白が成立しないため、こちらの主張を裏付ける証拠が揃っているかをよく検討する必要がある点に注意が必要です。

弁護士: 土井 將