非上場株式の財産分与

財産分与

1 はじめに

離婚時の財産分与では、夫婦の共有財産として保有していた株式も分与の対象になります。上場株式、非上場株式いずれも分与対象になりますが、このコラムでは、非上場株式の分与について考えていきたいと思います。

2 非上場株式を現物分割する場合の問題点

 非上場株式とは、証券取引所に上場していない株式のことをいいますが、夫婦の共有財産として、①投資資産として保有しているもののほか、②会社経営者が自社株として保有している場合があります。

 財産分与においてとりわけ問題になるのは②の場合です。

 会社経営者の保有する自社株は会社の経営権に直結しているため、分与対象となる自社株を相手方にそのまま分与する現物分割をしてしまうと、相手方に自社株を一定割合保有させてしまうことになり、離婚後も元配偶者が自社の経営に影響を及ぼすことになりかねません。

 したがって、新たな紛争を避ける意味でも自社株を現物分割することは避けるべきです。

 また、非上場株式は譲渡制限株式(会社法107条1項1号)であることが多く、譲渡については会社の承認を得る必要があるので、そもそも現物分割をしても、会社の承認を得られない可能性もあります。

3 代償分割による方法

 このような場合は、自社株を夫婦の一方が取得して、他方に分与割合に応じた代償金を支払う代償分割という方法によることが一般的です。

 ただ、その場合、非上場株式である自社株をいくらで評価するのかという評価額の算定という問題が出てきます。この問題については、コラム「財産分与における非上場株式の評価方法について」で解説しておりますので、こちらもあわせてお読みください。

 

弁護士: 壽 彩子