不動産の財産分与(親から頭金の贈与を受けた場合)
財産分与
1 問題の所在
財産分与の場面では、夫婦が婚姻中に取得した財産は,それがいずれかの特有財産であることが明らかでない限り,原則として夫婦が相互に2分の1の権利を有することになります。これを「(財産分与の)2分の1ルール」といいます。
ところで、結婚後に自宅不動産を購入する場合、夫婦の一方又は双方の両親から贈与を受けたお金を頭金に充てるというケースがよく見られます。このような場合に、離婚に際しての財産分与はどのようになるのでしょうか。
2 頭金は、財産分与として考慮することが可能
親から贈与を受けた金員は、贈与を受けた一方配偶者の特有財産に該当しますので、これに相当する部分については、財産分与の対象とならず特有財産を支出した配偶者の取り分となります。
3 具体的なケース
以下、自宅不動産を5000万円で購入する際、妻の両親から頭金として1000万円の贈与を受け、4000万円の住宅ローンを組み、不動産の現在の時価評価額が3000万円であるというケースを考えてみましょう。
(1)住宅ローン残債が3000万円以上の場合
不動産の時価評価額がローン残債を下回っている場合には、分与できる財産がないことになります。そのため、妻は、頭金の支出という負担をしたものの、財産分与請求を行うことはできません。なお、オーバーローン財産以外にも預貯金等の財産がある場合は、それと通算して分与額を算出するという見解もありますが、ここでは説明は割愛しています。
(2)住宅ローン残債が3000万円未満の場合
仮に住宅ローンの残債が2000万円の場合、時価評価額からローン残債を控除した1000万円が財産分与の対象と考えられますが、妻が頭金1000万円を支出していることを考慮して財産分与の金額を算定する必要があります。
そして、この場合の具体的な処理については、大阪高判平成19年1月23日判タ1272号217頁が参考になります。この裁判例では、財産分与の対象となる金額は、「自宅不動産の実質的価値×(1-特有財産の額÷取得額)」という計算式により算定することとされています。
上の例でいうと、財産分与の対象額=(2000万円-1000万円)×(1-1000万円÷5000万円)=800万円と算定されます。そして、夫婦双方の具体的な取得額は、以下のように算出されることになります。
- 妻:(1000万円-800万円)+800万円×1/2=600万円
- 夫: 800万円×1/2=400万円
具体的なケースを例に説明しましたが、実際の財産分与は、内容がより複雑なケースも多くありますので、財産分与でお困りの際は弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士: 山﨑 慶一朗