医療法人の出資持分の財産分与について

離婚の可否・不貞慰謝料等

1 はじめに

本コラムでは、夫婦の一方が婚姻期間中に出資した医療法人の出資持分が財産分与の対象になるか、という点について判例を紹介いたします。

2 医療法人の持分権

平成18年に医療法が改正され、医療法人の財産はその解散時に個人に帰属するものではなくなりました(医療法44条5項)。したがって、同改正以降に設立された医療法人の出資持分や社員たる地位は財産分与の対象にすることはできません。しかし、同改正前に設立された医療法人の中には出資持分のある医療法人が存在いたします。それでは、そのような医療法人の出資持分は財産分与の対象になるのでしょうか。

3 判例紹介

この点、大阪高判平成26年3月13日は、医療法に基づいて設立された医療法人に係る夫名義の出資持分を財産分与の対象とし、同医療法人の純資産額の7割を同出資持分の評価としました。

「本件医療法人は,平成10年10月に開設された本件診療所が平成13年4月5日に法人化されたものであり,本件医療法人設立後職員が若干増員されたものの,本件診療所における業務を継続するのに必要なものとして所有する資産や本件診療所の実質的な管理,運営実態等に大きな変化はなく,控訴人が形式上も出資持分の96.66パーセントを保有していることを考えると,本件医療法人が所有する財産は,婚姻共同財産であった法人化前の本件診療所に係る財産に由来し,これを活用することによってその後増加したものと評価すべきである。そうすると,控訴人名義の出資持分2900口のほか,形式上控訴人の母が保有する出資持分50口及び被控訴人名義の出資持分50口の合計3000口が財産分与の対象財産になるものとしてその評価額を算定し,控訴人が被控訴人名義の出資持分について財産分与を原因として控訴人に対する名義変更を求める旨の附帯処分の申立てをしていないことを考慮して,対象財産の総額に被控訴人の寄与割合を乗じて得た金額から,被控訴人名義の出資持分の評価額を控除する方法によって最終的な財産分与額を算定するのが相当である。」

医療法人の持分に関する財産分与については、弁護士にご相談ください。

弁護士: 田代梨沙子