婚姻を継続し難い重大な事由

離婚の可否・不貞慰謝料等

1 はじめに

相手方が離婚について争う場合は、法律が定める離婚原因が存在しなければ離婚は認められないことについては、コラム「相当期間の別居と離婚原因」でご説明の通りです。本コラムでは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に該当すると認められた事案についてご紹介いたします。

2 関連裁判例

・先妻の位牌を無断で親戚に送りつけたり、夫のアルバム等の私物を無断で焼却したことが、「婚姻関係を継続し難い重大な事由がある」と判断された事案

「上記1認定事実によれば,控訴人,被控訴人の結婚生活は,夫婦破綻を来すような大きな波風の立たないまま約18年間の経過をみてきたのに,控訴人による今時の別居生活が,平成19年から始まった被控訴人の一連の言動が主な理由であるため,双方の年齢,家族関係,婚姻期間等だけをとりあげて論ずれば,いまだ十分に婚姻関係が修復できる余地があるとの見方も成り立ち得ないではない。
 しかし,被控訴人の控訴人の親戚縁者と融和を欠く忌避的態度はさて措き,齢80歳に達した控訴人が病気がちとなり,かつてのような生活力を失って生活費を減じたのと時期を合わせるごとく始まった控訴人を軽んじる行為,長年仏壇に祀っていた先妻の位牌を取り除いて親戚に送り付け,控訴人の青春時代からのかけがえない想い出の品を焼却処分するなどという自制の薄れた行為は,当てつけというには,余りにも控訴人の人生に対する配慮を欠いた行為であって,これら一連の行動が,控訴人の人生でも大きな屈辱的出来事として,その心情を深く傷つけるものであったことは疑う余地がない。しかるに,被控訴人はいまなお,これらの斟酌のない専断について,自己の正当な所以を縷々述べて憚らないが,その理由とするところは到底常識にかなわぬ一方的な強弁にすぎず,原審における供述を通じて,控訴人が受けた精神的打撃を理解しようという姿勢に欠け,今後,控訴人との関係の修復ひとつにしても真摯に語ろうともしないことからすれば,控訴人と被控訴人との婚姻関係は,控訴人が婚姻関係を継続していくための基盤である被控訴人に対する信頼関係を回復できない程度に失わしめ,修復困難な状態に至っていると言わざる得ない。…したがって,別居期間が1年余であることなどを考慮しても,控訴人と被控訴人との間には婚姻を継続し難い重大な事由があると認められる。」(平成21年5月26日大阪高裁判決)

3 小括

今回ご紹介した事案では、別居期間が1年余りであったものの妻が夫の人格を無視した行為を繰り返し、また関係を修復する努力を見せなかったことから、婚姻を継続し難い重大な事由があると認められました。上記のような強度のモラルハラスメントがない事例であっても、夫婦間に未成年者の子どもがいない場合には比較的容易に離婚が認められることが一般的です。他方で、未成年者の子どもがいる場合には、生活基盤を維持する必要がございますので、子どもがいない場合と比較すると離婚が認められにくくなります。

別居期間が短くても離婚が認められることはありえますので、離婚について争いがある場合には、弁護士にご相談ください。

弁護士: 田代梨沙子