家族名義の財産の財産分与

財産分与

コラム「子ども名義の預金が財産分与の対象になるか」においては、未成年の子供名義の預金が、夫婦の共有財産と判断されるかという点について、判例を紹介いたしました。本コラムでは、夫婦の協力により形成された財産が、夫婦ではなく家族の名義の財産とされている場合に、同財産が財産分与の対象になるかという点について検討いたします。

原則として、第三者である家族名義の財産が財産分与の対象とされることはありません。しかし、夫婦が夫の家業にほぼ無償で従事していており、夫婦の稼働分が全て夫の父の収入になっているような場合も、これを財産分与の対象とすることは難しいのでしょうか。この点について、下記のように述べた判例が存在します。

「右二1認定のとおり、原被告は結婚後は被告の父A経営名義にかかる畜産業に従事していたのであるが、《証拠省略》によれば、原被告の稼働分は全てAの収入となり、婚姻中双方の協力で得た原被告名義の財産は存しないこと、もっとも婚姻後被告名義で取得したことになっている桑畑五町歩があるが、右は被告、その両親らが相談のうえ他から資金を借りて購入したものを偶々被告名義にしたものにすぎないことが認められ、右事実によれば、原被告が婚姻後双方の協力によって取得した、清算の対象となるべき原被告名義の財産は存しないものといえないではない。
 しかしながら、財産分与の対象となる財産は、夫婦が婚姻後双方の協力によって取得した財産であって現に法律上いずれかの名義に属するもののみではなく、法律上は第三者に属する財産であっても右財産が婚姻後の夫婦の労働によって形成もしくは取得されたものであって、かつ、将来夫婦の双方もしくは一方の財産となる見込の十分な財産も含まれると解するのが相当である。」(熊本地裁八代支部昭和52年7月5日判決)

財産分与について、お困りの際はぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士: 田代梨沙子