有責配偶者による婚費請求の可否
婚姻費用・養育費
1 はじめに
本コラムでは、不貞行為に及んだ配偶者(有責配偶者)による婚姻費用分担請求の可否について解説します。
2 関連裁判例
不貞に及んだ妻が、不貞を主たる原因とする別居後に夫に対して婚姻費用分担請求をした事案について判断をした複数の裁判例(大阪高裁決定平成28年3月17日・判時2321号36頁、東京家裁審判平成20年7月31日・家月61巻2号257頁、名古屋高裁金沢支部決定昭和59年2月13日・判タ528号301頁等)、婚姻費用のうち、未成年の子の実質的監護費用相当部分・養育費相当部分については請求可能としつつも、妻自身の生活費相当部分については権利の濫用として許されないと判示しました。
もっとも、上記裁判例のうち、名古屋高裁金沢支部決定昭和59年2月13日は、別居後間もない時期で、無収入の妻が自ら稼働するまでの生活の立て直しに必要かつ相当な期間については、例外的に妻自身の生活費相当額部分の婚姻費用として、生活保護水準程度の費用を夫が負担すべきと判断しました。
3 小括
上記裁判例の判示によれば、有責配偶者からの婚姻費用分担請求については、原則として有責配偶者が子を監護し続ける場合における当該子の養育費相当額部分のみ可能と考えられます。また、当該有責配偶者が無職である等の別居後の自立に一定期間を要する場合は、例外的に、当該一定期間における、有責配偶者の生活費相当額部分として、最低限の金額の婚姻費用分担請求が認められる可能性もあります。
弁護士: 土井 將