相当期間の別居と離婚原因
離婚の可否・不貞慰謝料等
第1 法定離婚原因
相手方が離婚について争わない場合は、離婚の可否が問題になることはなく、離婚条件について協議を行い離婚の成立を目指すということになりますが、相手方が離婚について争う場合は、法律が定める離婚原因が存在しなければ離婚は認められません。そして、法律が定める離婚原因は以下の5つです(民法770条1項)。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
そして、1号から4号が定める離婚事由がなくても、別居期間が相当期間に及んでいれば、具体的には、別居期間が3年から5年程度続けば、5号の「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と認められ、離婚請求が認められる、というのが近年の実務的傾向ではあります。
第2 別居期間が相当期間に及んでいるにもかかわらず、「婚姻を継続し難い重大な事由」がないと判断した裁判例
東京高判平成30年12月5日判タ1461号126頁は、離婚を希望する者(第1審原告)が代理人を通じ、相手方(第1審被告)に対し、「別居が一定期間継続すれば、二郎氏(第1審原告)は、裁判により離婚することができます。別居が一定期間継続した後に、行われる離婚の訴訟では、貴女が離婚をしたくないと主張をしたとしても、裁判所は、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、離婚を認めることになります。すなわち、貴女が離婚をしたくないと考えたとしても、日本の法律のもとでは、離婚が認められてしまうことになるのです。裁判所が、離婚を認めた場合には、裁判所が、二郎氏(第1審原告)と貴女の間の法律関係・財産関係を法律に基づいて、機械的に処理することになります。」などと記載した手紙を送付し、相手方との接触を避けて婚姻関係についての話し合いを一切拒絶した事案において、
「第1審原告は、さしたる離婚の原因となるべき事実もないのに・・・、単身赴任中に何の前触れもなく突然電話で離婚の話を切り出し、その後は第1審被告との連絡・接触を極力避け、婚姻関係についてのまともな話し合いを一度もしていない。これは、弁護士のアドバイスにより、別居を長期間継続すれば必ず裁判離婚できると考えて、話し合いを一切拒否しているものと推定される。離婚請求者側が婚姻関係維持の努力や別居中の家事専業者側への配慮を怠るという本件のような場合においては、別居期間が長期化したとしても、ただちに婚姻を継続し難い重大な事由があると判断することは困難である。第1審被告が話し合いを望んだが叶わなかったとして離婚を希望する場合には本件のような別居の事実は婚姻を継続し難い重大な事由になり得るが、話し合いを拒絶する第1審原告が離婚を希望する場合には本件のような別居の事実が婚姻を継続し難い重大な事由に当たるというには無理がある。したがって、婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえないから、第1審原告の離婚請求は理由がない。」として、別居期間が7年以上に及んでいたにもかかわらず、離婚請求を認容した第1審判決を取り消し、離婚請求を棄却しました。
第3 終わりに
このように、判例実務は、別居期間が相当期間に及んでいれば、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と判断し、離婚を認める傾向にはありますが、相当期間に及ぶ別居一本槍で離婚訴訟に臨むのは危険ですので、相手方が離婚について争い、さらには離婚原因の有無が問題になりそうな場合は、離婚に注力している弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
弁護士: 林村 涼