短期共済掛金は財産分与の対象となるのか
財産分与
1 はじめに
離婚に伴う財産分与を行う際、短期共済掛金は財産分与の対象となるのでしょうか。
短期共済掛金とは、共済組合に所属する組合員が支払う掛金(保険料)であり、共済組合による短期給付事業(共済組合の組合員と被扶養者の病気やケガ、出産、死亡、休業、災害などに対して給付を行う事業)に要する費用に充てられるもので、貯蓄されて、将来的に組合員がもらえる性質のものではございません。したがいまして、実務上、財産分与の対象外とされております。
以下、短期掛金は財産分与の対象外としている、高等裁判所の判例をご紹介いたします。
2 名古屋高等裁判所平成12年12月20日判決
妻(被控訴人)が、国家公務員であり共済組合に所属していた夫(控訴人)との離婚に際し、夫が婚姻期間中に共済組合に対し支払っていた短期共済掛金の総額を財産分与対象財産に加え、その2分の1を妻に分与すべきであると主張した事案です。この点につき、裁判所は以下の通り判示し、財産分与の対象財産には当たらないとしました。
「控訴人が支払っている右掛金のうち短期掛金は、単年度経理の対象となる療養の給付などの短期給付等に要する費用に充てられるものである(国家公務員共済組合法五一条、九九条等参照)ため、その支払によって当然に控訴人が何らかの具体的な財産的権利を取得するわけではない。」「したがって、被控訴人の前記主張は採用できない。」
弁護士: 中川真緒