親権者の死亡と親権者変更

親権・面会交流

1 はじめに

離婚後に一度決めた親権者を変更する際の手続については、コラム「親権者の変更」にてご説明いたしました。では、離婚後、親権者が亡くなった場合には、親権者は他方の親に変更されるのでしょうか。


2 当然に親権者変更はなされず、後見人が選任される


親権者が死亡した場合に、当然に親権者の他方の親に親権者変更がなされることはございません。親権者が死亡した場合、後見開始されます(民法838条)。後見とは、対象者の監護や財産の管理を実施することをいいます。


3 後見開始後に親権者変更を申し立てることも可能


では、後見が開始した後、親権者の変更を実施することは可能でしょうか。裁判所は以下の通り、後見開始後の親権者変更を肯定しています。

「離婚の際に、親権者を一方と定めるのは、親権の共同行使ができなくなつた結果、その主たる行使者を定めたに過ぎず、親権者とならなかつた親に対し、親権者としての適格性までも否定するものではない。…
さらに、民法第八三六条、第八三七条第二項によれば、親権の剥奪ないし辞任、親権者の所在不明により、後見人が選任された後であつても、親権を回復しうる場合があることの権衡上からみても、生存中の親が当然に親権者としての地位を回復するとの解釈はできないにしても、家庭裁判所が、具体的事情を考慮して、生存中の親に親権者としてのふさわしい事情が認められ、これが子の福祉の観点から肯定できる場合においては、親権者変更(形成)の審判をなしうるものと考えるのが相当である…
このような場合、通常、後見人を排除して親権者の変更を認める必要性は少ないであろうが、後見人が選任された後においても、適格性の認められる実親が親権者となつた方が子の福祉の面において、より適当な場合もあり、その途を全く封じ得ないからである」(東京家裁昭和53年2月2日審判)

弁護士: 田代梨沙子