財産分与における寄与割合

財産分与

1 はじめに

 財産分与では、財産に対する寄与割合を夫婦ともに2分の1と考え、1:1として分与するのが原則ですが、事例によっては寄与割合を修正した判決があります。本コラムでは、寄与割合を2分の1としない判決についてまとめました。

2 妻6:夫4とした審判

 東京家審平成6年5月31日では、妻が同居期間中に家事育児を全面的に負担していた上、妻の収入が夫の収入を上回っていたこと等から、妻の寄与割合を6、夫の寄与割合を4と判断されました。

夫婦の一方が家事育児を全面的に行った上就労していた場合に財産分与の寄与割合を6:4とした審判

3 妻7:夫3とした判決

 松山地西条支判昭和50年6月30日(判時808号93頁)では、妻が家計を助けるために始めた石油の外交販売から、その努力によってプロパンガス販売業にまで発展させたのに対して、夫は酒色におぼれ、暴力をふるって妻子を追い出し、妻は夫と別居後、独力で2人の子どもを大学まで進学させた事案で、営業財産を含め財産の7割を妻に分与しました。

4 妻4:夫6とした判決

 大阪高判平成26年3月13日では、夫が医師であり医療法人の出資持分96.66%を有し、妻も同医療法人の出資持分を有していた事例において、同医療法人の出資持分(純資産額の70%)を財産分与の対象財産に含めた上で、夫の寄与割合を6,妻の寄与割合を4と判断されました。

財産分与 2分の1ルールの例外

5 妻1:夫2とした判決

 奈良家審平成13年7月24日では、夫が香港で自分の小遣いで購入した勝馬投票券が当たり、日本円にして1億9000万円相当を得たが、これを資金にして婚姻中に購入した不動産の売却金につき、夫の運によるところが大きいとして、売却金の3分の1である1160万円を妻に分与しました。

6 妻5:夫95とした判決

 東京地判平成15年9月26日では、夫が会社経営者であり、夫側の特有財産から形成された共有財産が多いこと、その財産の運用・管理に携わったのも夫であること、妻側が会社経営に直接的・具体的に寄与したとはいえない等といった事情がある事例において、夫から妻への財産分与額としては、共有財産の価格合計約220億円の5%である10億円が相当であると判断されました。

会社経営者の財産分与

7 妻5:夫95程度とした判決

福岡高判昭和44年12月24日では、夫が医師であり、実質的には夫のみが出資し医療法人を経営していた事例において、同医療法人の資産収益関係も財産分与の対象財産に含めた上で、約4億円の夫婦共有財産のうち夫から妻への財産分与額として2000万円が相当であると判断されました。

経営者医師の財産分与

弁護士: 斉藤聡子