財産分与における非上場株式の評価方法について
財産分与
1 はじめに
離婚時の財産分与の際に、株式が対象財産になることがあります。
上場株式であれば、その株式の時価を調べることは容易ですが、非上場会社の株式は、市場の取引価格がないため、その評価が問題になります。
2 非上場株式の評価方法
非上場株式の評価額を計算するには、企業価値を算出する必要がありますが、算出の方法はいくつかあります。
将来の収益を推計し現在価値に換算する方法や、上場している類似会社や類似業種の株価から類推する方法、そのほかに企業が保有している資産の時価総額から、負債の時価総額を差し引いて計算方法もあります(時価純資産法)。
医療法に基づいて設立された医療法人の出資持分についても、評価の点で非上場株式と同様の問題が生じますが、この点が財産分与で争われた大阪高裁平成26年3月13日(判タ1411号177頁)でも、時価純資産法を採用して、出資持分を評価しています。
いずれにしても、非上場株式の評価額の計算は複雑で難しい計算ですので、公認会計士や税理士などに会社の財務諸表等を提出して、鑑定意見をもらうことになります。
3 簡易な方法による評価額の算出
とはいえ、このような方法は費用も時間もかかり、負担は小さくありません。
そこで、当事者双方がより簡易な方法でもって、株式の評価を行うということに合意できれば、それによって評価額を算出するということも考えられます。
たとえば、当該会社の決算報告書記載の純資産金額をもって企業価値とみなし、株式の評価額を計算するという方法も一案です。
財産分与として支払う側の当事者としては、正式な方法による鑑定を希望する場合もありますが、当事者双方にとって負担が大きいことから、まずは上記の簡易な方法によって評価額を算出する方法を検討し、場合によっては正式な鑑定を求める相手方を説得するということも考えてもよいかもしれません。
財産分与にお悩みの際は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
弁護士: 壽 彩子