財産分与の基準時

財産分与

1 別居時基準

財産分与は夫婦が協同で築いた財産を精算する制度であることから、一般に協力関係が続いていたといえる「別居時」に存在していた財産を対象として、財産分与が行われることが原則です。

【参考:名古屋高判平成21年5月28日 判時2069号50頁】

「清算的財産分与は、夫婦の共同生活により形成した財産を、その寄与の度合いに応じて分配することを、内容とするものであるから、離婚前に夫婦が別居した場合には、特段の事情がない限り、別居時の財産を基準にしてこれを行なうベきであり、また夫婦の同居期間を超えて継続的に取得した財産が存在する場合には、月割計算その他の適切な按分等によって、同居期間中に取得した財産額を推認する方法によって、別居時の財産額を確定するのが相当である。」

2 同居期間中に夫婦関係が破綻していた場合

以下のとおり、夫婦関係が実質的に破綻していた場合にも、同居が続いていた場合には、同居期間の蓄財も含め、財産分与の対象とすべきと判断されています。

【参考:東京家裁平成22年6月23日審判】

「申立人及び相手方の婚姻関係は遅くとも平成19年×月ころには破綻していたことが認められるが,それ以後も双方は従前どおり同居生活を送っていたのであるから,退職金の分与の算定の基準となる期間はその同居期間を基準とするのが相当である。」

3 おわりに

今回のコラムでは、財産分与の基準時について原則論をご説明しました。しかしながら、別居前後の個別具体的な事情を考慮し、別居時ではない別の時点を基準に財産分与が行われることもありますので、また別のコラムでご説明いたします。

弁護士: 立野里佳