財産分与の権利者と義務者について
財産分与
1 はじめに
財産分与は、純資産額が多い方(以下「義務者」といいます。)が少ない方(以下「権利者」といいます。)に対して財産を分与するものですが、自分が権利者であることを前提に財産分与調停(審判)を申し立てたものの、双方の財産が明らかになるにつれて、自分の純資産額の方が相手方の純資産額より多く、実は自分は義務者だったことが判明するということがあります。本コラムでは、このような場合に財産分与調停(審判)の申立人及び相手方が採るべき手段についてご説明いたします。
2 申立人が採るべき手段
申立人としては、申立てを取り下げるべきということになります。離婚から2年が経過すると、(自身こそが権利者であると気付いた)相手方は財産分与調停(審判)の申立てができなくなるため(民法768条2項ただし書き)、2年が経過するのを待って取り下げるのが望ましいです。ただし、審判は、相手方が書面を提出し、又は家事審判の手続の期日において陳述をした後は、相手方の同意を得なければ取り下げることができません〔家事事件手続法153条〕。
審判において、申立人が義務者である旨認定された場合、財産分与審判の申立ては基本的には却下されることとなります。
3 相手方が採るべき手段
相手方としては、財産分与の申立てから2年が経過すると、財産分与調停(審判)の申立てができなくなることから(民法768条2項ただし書き)、自分こそが権利者だと判明するや否や財産分与調停(審判)を申し立てるべきということになりますが、その時点ですでに離婚から2年が経過していた場合は、財産分与調停(審判)の申立てはできません。
もっとも、前述のとおり、審判は、相手方が書面を提出し、又は家事審判の手続の期日において陳述をした後は、相手方の同意を得なければ取り下げることができないため、相手方は、当該審判において、申立人に対し、財産分与を求めることとなります。
4 終わりに
次回のコラムでは、財産分与審判の申立てを却下する審判に対し相手方が不服を申し立てることができるかという問題を取り上げます。
弁護士: 林村 涼