財産分与調停における文書提出命令申立
財産分与
1 事案の概要
財産分与調停において、相手方から預金通帳が証拠として提出されましたが、相手方の給与の振込が見当たりませんでした。そこで、相手方が口座を隠していると思われる、ある金融機関に対し、調査嘱託の申し立てを行いました(調査嘱託の申立は、家事調停及び家事審判双方について家事事件手続法62条により認められています)。
しかしながら、当該金融機関からは、相手方の同意書がなければ口座情報を開示することができない旨の回答がありました。
相手方から同意書を得ることは困難と思われたため、裁判所に文書提出命令申立書を提出しました。
その結果、相手方から当該金融機関の口座履歴が提出されることになりました。
2 文書提出命令
文書提出命令とは、相手方当事者又は第三者が文書を所持する場合に、その所持者が文書の提出義務を負う場合に限り、裁判所がその所持者に対して当該文書の提出を命じる手続きであり、民事訴訟法220条以下に定められています。
家事事件手続法64条1項で、家事審判の手続における証拠調べについて上記規定が準用されていることから、家事審判手続きにおいて文書提出命令の申し立てをすることができます。
また、家事調停手続きについて定めた同法258条1項により同法64条1項が準用されていることから、家事調停手続においても、文書提出命令の申し立てをすることができます。
3 おわりに
相手方の財産が隠されたまま財産分与がされてしまうと、本来分与を受けられたはずの財産が得られないことになります。
財産分与の交渉や調停については、弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士: 斉藤聡子