財産分与請求権の相続の可否1

財産分与

1 はじめに

本コラムでは、離婚調停中の夫婦の一方が死亡した場合に、財産分与請求権がその相続人に相続されるかという点について解説します。

2 東京高決平成16年6月14日・家月57巻3号109

夫が妻に対して離婚及びこれに伴う財産分与を求める夫婦関係調整が申し立てられたものの、調停が成立しないままに夫が死亡した後、その相続人が財産分与を求めた事案において、裁判例(東京高決平成16年6月14日・家月57巻3号109頁)は、「財産分与に関する規定及び相続に関する規定を総合すれば,民法は,法律上の夫婦の婚姻解消時における財産関係の清算及び婚姻解消後の扶養については,離婚による解消と当事者の一方の死亡による解消とを区別し,前者の場合には財産分与の方法を用意し,後者の場合には相続により財産を承継させることでこれを処理するものとしていると解するのが相当である(最高裁判所第一小法廷平成12年3月10日決定・民集54巻3号1040頁参照)。したがって,離婚が成立するより前に夫婦の一方が死亡した場合には,離婚が成立する余地はないから,財産分与請求権も発生することはないものである。そのことは,夫婦の一方の死亡前に,その者から家庭裁判所に離婚を求めて調停が申し立てられ,調停申立ての趣旨の中に財産分与を求める趣旨が明確にされていた場合でも同様である。」として、財産分与請求権の相続性を否定しました。

この事例では、夫の遺言書において財産分与請求権についての「相続させる」文言があったという事情がありながらも、上記のとおりの判断がなされました。上記判示内容によれば、離婚が成立する前に夫婦の一方につき相続が生じた事案では、基本的には財産分与請求権が相続の対象になることはないという帰結になります。

弁護士: 土井 將