離婚と氏について
離婚
1 はじめに
民法では、「夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定めており(750条)、婚姻時に夫又は妻のいずれかの氏を選ぶことになります。
それでは、夫婦が離婚する際には、その氏の使用を続けることができるのでしょうか。このコラムでは、「婚氏続称(こんしぞくしょう)」つまり、婚姻時に使用していた氏を離婚後も称することについてご説明します。
2 婚氏続称について
民法767条1項では、「婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する」とし、婚姻時に氏を変更した夫又は妻は、離婚後には婚姻前の氏に戻る「復(ふく)氏(うじ)」を定めています。
もっとも、その2項において「前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。」と定めており、離婚した日から3か月以内に届け出をすることによって、婚姻時に称していた氏を離婚後も称することができます。
この届出は、離婚届を提出した際に同時に行うことも可能ですが(離婚届の書式に婚氏続称を届け出る欄があります)、離婚届出の後に別途行うこともできます。ただ、離婚届出の後に別途行う場合は、離婚届によって一旦婚姻前の戸籍に戻るのが原則ですので(戸籍法19条1項「復籍」。)、再度婚氏に戻すまでには戸籍を新たに作製する必要があります。そのため、婚氏に戻すのに時間がかかることがありますので、ご注意ください。
3 氏の変更許可申立て
それでは、離婚の日から3か月経過した後に、婚氏に戻すことはできるのでしょうか。
戸籍法107条1項では、「やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」と定めており、家裁判所に、氏の変更許可申立てを行うことができます。氏を変更する「やむを得ない事由」があれば、家庭裁判所から氏の変更を許可され、離婚後3か月が経過しても婚氏に変更することができます。離婚からそれほど年月が経過していない場合は、一般の変更より「やむを得ない事由」が認められやすいようです。
4 子の氏について
注意が必要なのは、離婚後の子の氏についてです。子の氏は、離婚後も従前の戸籍に入ったままになるので、子の氏は自動的には変わりません。離婚後、子を夫又は妻の新戸籍に移すためには、上記3で述べた氏の変更許可申立てを行う必要があります。
以上
弁護士: 壽 彩子