預貯金の特有財産性

財産分与

1 財産分与の対象

 財産分与は、離婚に伴い夫婦が婚姻期間中に形成した共有財産全体を清算するものです。夫婦が有している財産の全てが財産分与の対象になるとは限りません。夫婦の一方が第三者から贈与を受けた財産等は、夫婦が婚姻期間中に形成した共有財産とはいえず、特有財産として財産分与の対象とならないことがあります。本コラムでは、離婚時(あるいは別居時)に存する預貯金について、一般的な判例実務の取り扱いについてご紹介します。

2 一般的な判例実務

 一般的な判例実務においては、婚姻時の預貯金等が同居期間中に渾然一体となって生活費等に充てられ同居期間中の収入により填補されていた場合、別居時の預貯金等残高から婚姻時の預貯金等残高は控除されないと判断されています。

 婚姻前に夫婦の一方が貯蓄していて、婚姻期間中に殆ど出入金がされていない定期預金等は、その人の特有財産と評価され、財産分与の対象にならないことがあります。給料の振込口座となっていて出入金が繰り返されている場合は、婚姻前に貯蓄されていて残高が残っていたとしても、その預貯金が婚姻後の家計と渾然一体となっており、特有財産とは認められず夫婦共有財産として扱われるのが原則です。

 預貯金が、夫婦共有財産にあたるか、特有財産になるのかによって、財産分与の結果が大きく異なりますので、専門家にご相談されることをお勧めいたします。

弁護士: 斉藤聡子