無縁墓地の処理(墓じまい)について①

無縁墓地のお墓を撤去して,お骨を別の場所に埋葬したいのだけれども,そのためにはどうしたらいいの?というお悩みを持つ宗教法人の皆さまは多いと思います。

 

そこで,そのための手続きの概要をご説明したいと思いますが,ここでまず注意しないといけないのは,①無縁墓地の撤去(お骨の移動)のための行政上の手続と,②墓地利用者との民事関係の解消のための手続は,全く違うということです。①だけを実施すればそれでOKと考えている方もいらっしゃるようで,それによって②の点で利用者から損害賠償を請求されたもあります(高松高等裁判所平成26年2月27日判決 平成25年(ネ)第317号など)。

 

このコラムでは,まず,①の手続についてご説明し,また後日,②の点についてご説明します。まずは,①だけではダメで,②も必要だという点を頭にとどめていただきますよう,お願いいたします。

 

さて,①の手続ですが,これは,墓地法上の問題です。墓地法の正式名称は,「墓地、埋葬等に関する法律」で,その目的は,「墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われること」です。簡単にいうと,宗教的感情と,衛生上の観点から,墓地や埋葬について管理しましょうという法律です。したがって,民事上の権利関係とは全く別の観点から墓地や埋葬を規制したものであると理解する必要があります

 

そして,この墓地法の第2条3項では,「この法律で『改葬』とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。 」と定めており,「改葬」についても管理をしようとしています。そして,無縁墓地に埋葬されたお骨を移動させることは,ここでいう「改葬」にあたることになり,墓地法の管理下に置かれます。

 

次に,墓地法の5条では,「改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。 」と定めており,ここでの「厚生労働省令」である「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」の2条は,以下の通りの手続を定めています。

つまり,以下に書かれたような書類を,墓地の市町村長に提出して,市町村長の許可を得ないといけないというわけです。大変ですね・・・。なお,その中でも特に,下記の「第三条」に書かれた必要書類を準備するのが面倒なのですが,これは,「無縁墳墓」=「死亡者の縁故者がいない墓」の場合に必要となる書類であり,そうすると,結局のところ,無縁墓地については,相続人をできる限り探して,その人から承諾書(下記の第2条2項1号の承諾書)を得た方が,手続が早く済む可能性が見込まれます。そして,その際に,後日またご説明する②の問題について決着をつけた方が,安全と言えますね。

相続人を探すのも,その相続人と交渉をするのも,専門家に依頼したほうが良いかと思われますので,宗教法人に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

墓地、埋葬等に関する法律施行規則

第二条  法第五条第一項 の規定により、市町村長の改葬の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を、同条第二項 に規定する市町村長(←※牧野注:ここではお骨の現に存する地の市町村長です)に提出しなければならない。

 死亡者の本籍、住所、氏名及び性別(死産の場合は、父母の本籍、住所及び氏名)
 死亡年月日(死産の場合は、分べん年月日)
 埋葬又は火葬の場所
 埋葬又は火葬の年月日
 改葬の理由
 改葬の場所
 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者(以下「墓地使用者等」という。)との関係

 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

 墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)
 墓地使用者等以外の者にあつては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本
 その他市町村長が特に必要と認める書類

第三条  死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂(以下「無縁墳墓等」という。)に埋葬し、又は埋蔵し、若しくは収蔵された死体(妊娠四月以上の死胎を含む。以下同じ。)又は焼骨の改葬の許可に係る前条第一項の申請書には、同条第二項の規定にかかわらず、同項第一号に掲げる書類のほか、次に掲げる書類を添付しなければならない。

 無縁墳墓等の写真及び位置図
 死亡者の本籍及び氏名並びに墓地使用者等、死亡者の縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し一年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札に一年間掲示して、公告し、その期間中にその申出がなかつた旨を記載した書面
 前号に規定する官報の写し及び立札の写真
 その他市町村長が特に必要と認める書類
弁護士 牧野誠司

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