会社経営者の財産分与

財産分与

1 2分の1ルール

財産分与の金額の計算の際には、夫婦共有財産を2分の1にして分与するのが原則的な考え方となります。

この「2分の1ルール」には例外があり、例外についての考え方を判示した裁判例(大阪高裁平成26年3月13日)については、別コラムにて紹介しておりますので、こちらもご参照ください【財産分与 2分の1ルールの例外】

2 東京地判平成15年9月26日(平成13年(タ)第304号、平成13年(タ)第668号 離婚請求事件、離婚請求等反訴事件)

今回のコラムでは、財産分与の割合を大幅に修正して「95:5」とした裁判例を紹介します。

こちらの事案は、会社経営者である夫側の特有財産から形成された共有財産が多いこと、その財産の運用・管理に携わったのも夫であること、妻側が会社経営に直接的・具体的に寄与したとはいえない等として、夫側の割合を95%としました。本件では、共有財産の範囲も争点となりましたが、結論として対象となる共有財産は約220億円とされ、妻側へ5%である10億円を分与すべきという結論となりました。

「前記認定のとおり,被告は,A1社,I1社を初めとする多くの会社の代表者であって,社団法人,財団法人等の多くの理事等を占める,成功した経営者,財界人である原告の,公私に渡る交際を昭和58年頃から平成9年頃までの約15年に亘り妻として支え,また,精神的に原告を支えたことからすると,間接的には,共有財産の形成や特有財産の維持に寄与したことは否定できない。」
「しかし,他方,前記認定のとおり共有財産の原資はほとんどが原告の特有財産であったこと,その運用,管理に携わったのも原告であること,被告が,具体的に,共有財産の取得に寄与したり,A1社の経営に直接的,具体的に寄与し,特有財産の維持に協力した場面を認めるに足りる証拠はないことからすると,被告が原告の共有財産の形成や特有財産の維持に寄与した割合は必ずしも高いと言い難い。」
「そうすると,原被告の婚姻が破綻したのは,主として原告の責任によるものであること,被告の経歴からして,職業に携わることは期待できず,今後の扶養的な要素も加味すべきことを考慮にいれると,財産分与額は,共有物財産の価格合計約220億円の5%である10億円を相当と認める。」

弁護士: 立野里佳