会社経営者の財産分与
財産分与
1 はじめに
本コラムでは、会社経営者の財産分与について取り扱います。
2 寄与割合について
現在の家庭裁判所の実務では、夫婦が婚姻中に取得した共有財産を、2分の1で分けるのが原則です。
ただし、夫婦共有財産の形成への寄与の差が大きい場合には、例外的に2分の1ルールが修正されることがあり、別のコラムで、会社経営者の財産分与において2分の1ルールを大幅に修正し、「95:5」とした裁判例(東京地判平成15年9月26日)を紹介しました(【会社経営者の財産分与】)
この東京地裁の裁判例では、「夫婦共有財産の原資はほとんどが原告の特有財産であったこと,その運用,管理に携わったのも原告であること,被告が,具体的に,共有財産の取得に寄与したり,A1社の経営に直接的,具体的に寄与し,特有財産の維持に協力した場面を認めるに足りる証拠はないこと」から、「被告が原告の共有財産の形成や特有財産の維持に寄与した割合は必ずしも高いと言い難い。」として、「95:5」と判断した事例です。
他方で、同じく会社経営者の財産分与が問題となった裁判例として、広島高裁平成16年6月18日は、次のとおり判示して、寄与割合は平等(2分の1)と判断しました(一審被告の上告受理申立は不受理決定(最決平成16年12月9日))。前述の東京地裁の裁判例との違いは多々ありますが、一つのポイントとして、広島高裁の事案では、妻としての内助の功にとどまらず、具体的に会社運営に関与していたことが考慮されています。
「一審被告は、休みを取ることもなく自動車修理業を営み、一審原告も、本件婚姻後暫くしてから一審被告の仕事を手伝い始め、子らを保育園に預けるなどしながら、請求書の発行、管理、納品伝票の管理、集金の集約、管理等の経理事務を担当し、帳簿操作をして裏金を作ることもあった。」「一審原告が家事や四名の子の育児に従事しながら、一審被告の事業に協力し続け、資産形成に大きく貢献したことに徴すると、一審原告の寄与率は五割と解され、一審原告は財産分与として金三億二六三九万三五六八円(一円未満切り捨て)相当の財産を取得するのが相当である。」
なお、こちらの事案は、夫(一審被告)が婚姻前から自動車の修理等の仕事をしていたところ、昭和48年11月7日に婚姻、その後、当該事業を夫婦で営み、法人(有限会社)を設立したという事案ですが、法人の保有する財産が財産分与の対象となるかについて、一審(岡山地判平成14年9月25日)は、同法人は「原告と被告を中心とするいわゆる同族会社であって、実質的には、これら会社の財産は、原告と被告の財産と同視することができる。したがって、これら会社名義にかかる財産も実質的には原告と被告の共有財産として、財産分与の対象とするべきである。」と判示しています。
弁護士: 谷 貴洋