収入が2000万円を超える場合の婚姻費用の算出の仕方②

婚姻費用・養育費

はじめに

以前のコラムで、収入が2000万円を超える場合婚姻費用の算定方法についてはいくつかの考え方があることをご説明いたしました。

今回は、①上限頭打ち方式②基礎収入割合修正方式③貯蓄率控除方式④同居中の生活レベル算定方式のうち、③貯蓄率控除方式について詳しく解説していきます。

貯蓄率控除方式の考え方

基礎収入は、年収から、必要不可欠な経費(公租公課・職業費・特別経費)を控除した残額部分になり、これを生活費指数で按分するという方法が一般的です。

貯蓄率控除方式の考え方はここから、さらに、貯蓄費を控除するという考え方になります。これは、高額所得者については、その収入が多いため、貯蓄などの資産形成にまわる割合が大きくなり、生活費の割合が低くなると考えられるからです。

この考え方によると、公租公課については、実額を控除し、職業費・特別経費については、各最小値(職業費は13.31%、特別経費は13.54%)を用いた上で、貯蓄率を控除するという方法が多くとられています。

ただし、職業費・特別経費について最小値を採用した減少額が全て貯蓄にまわるわけではないことの考慮や、収入2000万円以下の家計であったとしても貯蓄はすることから、収入2000万円世帯の貯蓄率を控除しなければならないこと、貯蓄率について、可処分所得に対する割合を主張する場合であれば、総収入に対する割合ではなく、可処分所得から控除するなどの注意が必要です。

裁判例

給与所得(1410万円)と不動産所得等を含めた総収入が約3900万である事案について、貯蓄相当分として、総収入から所得税、市県民税、社会保険料を控除した残額(可処分所得)に18.8%を乗じた額を控除して、基礎収入を約1045万円としたもの(神戸家裁尼崎支部審平成19年10月5日 松本哲泓著『改訂版 婚姻費用・養育費の算定-裁判官の視点にみる算定の実務-』154頁)

給与所得(2050万円)と不動産所得・配当所得等を含めた総収入(全て給与所得に換算した場合の合計)が約3940万円である事案について、総世帯のうち、勤労者世帯の貯蓄率、2人以上の世帯のうち勤労者世帯の貯蓄率の統計等を考慮して、総収入から税金及び社会保険料を控除した残額(可処分所得)の7%を乗じた額を控除して基礎収入としたもの(東京高決平成28年9月14日 判タ1436号113頁)

などがあります。

最後に

高額所得者の婚姻費用については、一般の算定表からは計算が難しく、事情により、控除される金額も変わってきます。

ぜひ専門家である弊所にご相談ください。

 

弁護士: 森下 裕