国際離婚(1):中華人民共和国(中国)国籍の方が結婚・離婚する場合に適用される法律

国際離婚

2023年1月27日/弁護士 武田雄司

1.はじめに

 日本にも多くの外国籍の方が居住されておられ、国籍が異なる方どうしで結婚されているケースも珍しくありません。外国籍の方が結婚・離婚される場合は、どこの国の法律が適用されることになるのでしょうか。

2.日本に居住する外国籍の方が結婚・離婚する場合に適用される法律

 日本以外の国籍の方が関係する法律関係に関して、どこの地の法律が適用されるかということについては、「法の適用に関する通則法」に定めがあり、結婚・離婚については次のとおり定められています。

(婚姻の成立及び方式)
第二十四条 婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
3 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。
(婚姻の効力)
第二十五条 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。
(離婚)
第二十七条 第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。
(反致)
第四十一条 当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)又は第三十二条の規定により当事者の本国法によるべき場合は、この限りでない。

3.中華人民共和国(中国)の国籍の方が結婚・離婚する場合

 中華人民共和国(中国)の方が結婚・離婚する場合、「婚姻の成立」については、その「本国法」である中華人民共和国の法律が適用されることになります。
※台湾、香港、マカオは、それぞれ別の法体系があるため、ここでいう「中華人民共和国」には含まれない点に注意が必要です。

 「婚姻の方式」については、挙行地の法律が適用され、どこで手続をしたかによって、適用される法律が決まることになります。

 「婚姻の効力」については、中華人民共和国の国籍の方同士の場合には、中華人民共和国法が適用されますが、どちらか一方のみが中華人民共和国の国籍の方の場合には、夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法が適用されることになります。

 以上のとおり、それぞれの適用法はある意味明確ではありますが、実際の事件では、対象となる事象が、「婚姻の方式」(離婚の方式)に該当するものなのか、「婚姻の効力」(離婚の効力)に該当するものなのかという点で問題が生じることがあります。次回は、この具体的な例を見ていきたいと思います。

以 上

弁護士: 武田雄司