婚費算定における障がい年金の取扱い
婚姻費用・養育費
1 はじめに
本コラムでは、婚姻費用算定の基礎となる基礎収入の検討における障がい年金の扱いについて解説します。
2 障がい年金の基礎収入該当性
年金収入は、給与所得と事業所得のいずれにも該当しませんが、これを給与所得に換算して給与所得者に準じて取り扱うことが原則です。
障がい年金についても、障がい者の自立等のために支給されるものではありますが、配偶者や子のための相当額の加算制度もあり、受給者の家族の生活保障の一部ともなっていることを理由に、婚姻費用算定における基礎収入として評価した裁判例があります(さいたま家裁越谷支部審判令和3年10月21日・判時2537号15頁)。
そして、同裁判例は、障がい年金が職業費を要しない収入であるため、標準算定方式の前提となった統計における職業費の平均値である15%で割り戻したうえで受給者の基礎収入を算定しました。
3 医療費等の特別経費の考慮
上記裁判例では、基礎収入等から算定された婚姻費用について、受給者が障がい年金受給の前提となった症状についての治療費を支出していることを考慮して、最終的な婚姻費用の金額を軽減しました。
また、婚姻費用の権利者の収入の一部に障がい年金が含まれている事案における婚姻費用を判断した別件裁判例(福岡高決平成29年7月12日・判タ1452号76頁)は、障がい年金受給者の医療費等の特別経費を通常よりも多くみる必要がある点を考慮した結果として、婚姻費用を増額させるべき旨判示しました。
弁護士: 土井 將