株式の財産分与(婚姻前の取得)

財産分与

 先日、経営者の方から、このようなご質問をいただきました。「自分(夫)は、株式の財産分与の会社を設立して同社の一人株主となったが、その後婚姻し、離婚(別居)に至った時点で、会社の株式の価値が(婚姻前と比べて)上昇している。この場合、会社の株式が財産分与の対象となるのか、また、その価値はいつを基準として算定するのか(婚姻後の株価上昇は考慮されるのか)」。

 さて、ご質問に対する回答ですが、そもそも、財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた財産を精算するため、その分与を求めるものです。そうすると、夫婦の一方が、婚姻前(独身時代)から保有する財産は、夫婦が婚姻中に築いた財産とは言えませんので、財産分与の対象とならないのが原則です。このように、財産分与の対象とならない財産のことを「特有財産」といいます。ご質問によると、ご相談者は、婚姻前(独身時代)に出資をして会社の株式を保有するに至っています。そうすると、その株式は、「特有財産」として財産分与の対象とならない(財産分与の対象とならない以上、株価の基準時を考慮する必要はない)というのが結論となります。なお、このとき仮に、婚姻中に株式を売却していた場合であっても、その売却益は、特有財産たる株式が形を変えたものに過ぎませんので、やはり特有財産として財産分与の対象となりません。

 他方、以上のご質問と別のケースとして、「婚姻後に株式を取得し、離婚(別居)に至った時点で、その株式の価値が(株式取得時と比べて)上昇している」という事案の場合には、また別の結論となりますが、それはまた別のコラムで紹介をさせていただきます。

弁護士: 谷 貴洋