自動車の財産分与

財産分与

1 はじめに

 本コラムでは、婚姻期間中に夫又は妻が購入した自動車の財産分与について解説いたします。

2 清算対象に関する基準時と評価に関する基準時等

 まず、どの時点で所有している自動車が財産分与の対象となるか、という点が問題になりますが、基本的には(婚姻期間中に夫又は妻が購入した自動車のうち)別居時点で所有している自動車が財産分与の対象になります(清算対象に関する基準時の一般論について解説しているコラム「財産分与の対象資産の内容を決める基準時」もご覧ください。)。
 次に、財産分与の対象となる自動車をどの時点を基準に評価するか、という点が問題になりますが、口頭弁論終結時の時価で行います。口頭弁論終結に先立ち当該自動車を売却した場合は、売却によって得られた利益が評価額となります。
 評価の方法としては、オートガイド自動車価格月報(通称レッドブック)の下取価格を参照の上評価するのが一般的です。査定書を参照の上評価することもありますが、自動車の場合、不動産と異なり、買取業者が査定書を発行してくれないことも少なくありません。
 なお、実務上、初年登録から10年以上経過している自動車は無価値と評価するのが通例です。

3 具体的な条項や主文

 調停等の場合は、以下のような条項の合意をすることになります。
「 ■■は、〇〇に対し、離婚伴う財産分与として、別紙物件目録記載の自動車を譲渡する。
2 ■■は、〇〇に対し、前項の自動車について、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登録手続をする。登録手続費用は〇〇の負担とする。
3 ■■は、〇〇に対し、第1項の自動車を△年△月△日限り、現状のまま■■の住所地にて引き渡す。」
 審判・判決の場合は、以下のような主文の審判・判決が出されることになります。
「 〇〇に対し、離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の自動車を分与し、所有権移転登録手続をせよ。」

4 自動車ローンが残っている場合

 ローンが残っている場合、通常、自動車の名義人は夫婦のいずれかではなく自動車会社やローン会社となっており、そのような場合、裁判所は「3」でご紹介したような内容の審判・判決は出しません。調停等の場合は、当事者間で「3」でご紹介したような内容の合意をすること自体は可能ですが、名義変更には自動車会社やローン会社の同意が必要ですので、合意に先立ち自動車会社やローン会社に意向を確認すべきということになります。

弁護士: 林村 涼