財産分与における交通事故等の賠償金の扱い

財産分与

1 はじめに

本コラムでは、交通事故等の賠償金が財産分与においてどのように扱われるのかという点について解説します。

2 交通事故等の賠償金の性質

交通事故等の加害行為による賠償金は、大きく分けて①積極損害、②消極損害、③慰謝料の3種類に分類されます。

①の積極損害とは、治療費、入院費、修理代等の被害者側が実際に支払いをせざるを得ない損害をいいます。
②の消極損害とは、休業損害や逸失利益等の被害者側が本来得られたはずの利益についての喪失損害をいいます。
③の慰謝料とは、交通事故等に遭ったことによる精神的苦痛に対する金銭賠償をいいます。

3 財産分与における取扱い

①の積極損害について、例えば自動車の修理代等については、当該自動車の代償財産とみることができます。そのため、例えば当該自動車が夫婦の一方の特有財産の場合はその代償財産たる修理代等も特有財産として扱われ、財産分与の対象から除外されることになります。もっとも、代償財産が保険金であり、かつ、その掛金を夫婦共有財産から支出している場合には、代償財産を財産分与の対象とすることはあり得るところです。

②の消極損害のうち、休業損害については通常の収入と同様に考えて財産分与の対象とし、逸失利益については、婚姻期間中の部分に係るものに限定して財産分与の対象となります(大阪高決平成17年6月9日・家月58巻5号67頁)。

③の慰謝料については、特有財産として財産分与の対象から除外されます。

弁護士: 土井 將