財産分与の前渡し
財産分与
1 離婚前に渡した財産の扱い
離婚の前に渡した財産が、離婚の際に財産分与の前渡しと評価される場合があります。離婚前に渡した財産が財産分与の趣旨である場合、前渡しした財産は財産分与の前渡しであるとして、財産分与の場面で清算されます。
2 必ずしも財産分与の前渡しと評価されるわけではない
しかし、離婚の前に渡した財産が、必ず財産分与の前渡しと評価されるわけではありません。その贈与の当事者間の認識がどうであったか、目的はどのようなものであったかを確認する必要があります。
大阪高裁平成23年2月14日決定家庭裁判月報64巻1号80頁
上記裁判例では、婚姻中に夫が妻に対してした不動産の贈与は、妻が夫による不貞行為を疑い、現に夫による不貞行為を疑われてもやむを得ない状況が存在した中で、妻の不満を抑える目的で行われたものであり、清算的要素をもつ上記贈与により上記不動産中実質的夫婦共有財産である部分についても確定的に妻に帰属させるのが当事者の意思であったなど判示の事情の下では,上記不動産は,妻の特有財産となったと認めるのが相当であって、これを清算の対象としなければ公平の観点や社会通念上不当であるような特段の事情が認められない以上、財産分与の対象とならないという趣旨の判断がなされています。
弁護士: 仲野恭子