収入が2000万円を超える場合の婚姻費用の算出の仕方①

婚姻費用・養育費

はじめに

以前のコラムで、婚姻費用の算定方法についてご説明いたしました。

裁判所が明確に示している基礎収入を算出する場合の基礎収入割合については、年間2000万円までの給与所得者となっています。

裁判所H P:
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

2000万円を超える給与所得者の場合には、どのように計算されるのでしょうか。

なお、2000万円までの基礎収入割合は以下の通りとなります。

〜2000万円 38%
〜1475万円 39%
〜1325万円 40%
〜 725万円 41%
〜 525万円 42%
〜 275万円 43%
〜 175万円 44%
〜 125万円 46%
〜 100万円 50%
0〜 75万円 54%

出典:司法研修所編『養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究』法曹会2019年

算出方法

まず、算出方法としては、①上限頭打ち方式②基礎収入割合修正方式③貯蓄率控除方式④同居中の生活レベル算定方式が提案されています。

今回はこのうち、②基礎収入割合修正方式について詳しく解説していきます。

基礎収入割合の考え方

2000万円までの基礎収入割合については、所得が多くなるにつれて、減少する関係にあります。

というのも、基礎収入は、年収から、必要不可欠な経費(公租公課・職業費・特別経費)を控除した残額部分になります。所得が高額になるに伴い公租公課は増大し、他方で、職業費、特別経費は減少する傾向にあります。

そのため、全体として、高額所得者ほど基礎収入割合は減少します。

裁判例

この考え方から、裁判例では、

収入約6200万円につき、基礎収入割合は27%が相当としたもの(福岡高裁平成26年6月30日審判 判タ1410号100頁)

収入3900万円につき、基礎収入を1045万円として、基礎収入割合を26.7%としたもの(神戸家裁尼崎支部平成19年10月5日審判 家裁月報62・11・80)

収入4855万円につき、基礎収入を1268万円として基礎収入割合を26.1%としたもの(大阪高裁平成20年6月9日審判 家裁月報62・11・80)

があります。

最後に

そのため、高額所得者の婚姻費用については、一般の算定表からは計算できませんが、裁判例をもとに、おおよその婚姻費用を計算することができます。

ぜひ専門家である弊所にご相談ください。

 

弁護士: 森下 裕